外国人の人権

1.外国人の人権享有主体性
 以下の理由により、、人権の性質に応じて保障される。
 @人権は生まれながらに持っている前国家的な権利である。
 A憲法は国際協調主義をとっている。
 B人権の国際化の中で、自国民と外国人を差別してならない。

 ●「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその
対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」(マクリ
ーン事件判決(最大判S53.10.4))。

 ●外国人も生活の様態等によって保障される権利の内容は異なる(参照:芦部信喜『憲法学
U』1994/1/10、p.129-131)。

2.保障される人権の範囲
 以下で、保障されない理由を個別に検討。
 1)参政権
 ●「自国の主権の保持・独立および国家利益という見地から、防衛、外交、内政などに関す
る重要事項については、原則として、自国民のみ関与させ、外国人の参加を認めない」

 ●地方公共団体へは容認する立場が有力。
  ・「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団
体と特段に密接な関係を持つに至ったと認められるものについて」、地方参政権を与えること
は憲法上禁止されていない(最大判H7.2.28)。

 ●公務就任権
  ・「公務員に関する当然の法理として、公権力の行使または国会意思の形成への参画にた
ずさわる公務員となるためには、日本国籍を必要とする」(1953年内閣法制局および人事院見
解)。
  ・「調査的・諮問的・教育的な職務」には定住外国人も就任できるとする考え方もある(参
照:芦部信喜『憲法学U』p.133-136)。

  ・行政事務を担当する普通の公務員になる権利は、「職業選択の自由」において保障され
ているとみる考え方もある。

 2)社会権
 ●財政事情等に支障がないかぎり、法律において外国人に社会権の保障を及ぼすことは憲
法上問題はない。
 ⇒「限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱う
ことも、許される」(塩見訴訟(最判H元.3.2))。

 3)入国の自由
 ●入国の自由
  ・外国人に入国の自由が認められないことは、国際法上当然。
  ⇒国際化された時代に、人権尊重と自由往来の原則から、原則的に外国人の出入国の自
由を認め、「国家の独立と安全を侵すかあるいは公序良俗に反する現実かつ明白なおそれが
ある外国人の入国を拒否すれば足りる」との説もあり。

 ●定住外国人の在留資格はみだりに奪われない。
 ●再入国の自由(外国人の外国への一時旅行の自由)
  ・出国の自由は認められる。
  ・再入国の自由は認められない(森川キャサリーン事件(最判H4.11.16))。
  ⇒「著しくかつ直接にわが国の利益を害することない限り、再入国が許可されるべきであ
る」との見解あり(参照:芦部信喜『憲法 新版 補訂版』1999/3/8、p.91-93)。

 4)自由権
 ●諸々の制約あり。
  ・住居移転の自由:外国人登録法
  ・職業選択の自由:公証人法、弁理士法
  ・財産権:外国人土地法

 ●政治活動の自由
  ・外国人の政治活動の自由を限定的に考えるのが、多数説・判例。
  ⇒以下の理由で外国人の政治活動が認められるべきとの見解あり。
   @政治活動たる表現活動は、主権的意思決定それ自体ではなく、それに影響を与えるす
ぎない行為である。参政権と政治活動の質的差を重視するべきである。
   A視点の豊富化に貢献する。

以上
トップへ
戻る