同時進行!!ウィークリー馬券物語

56回: 阪神3歳牝馬+特別編

5回中山競馬がスタート。例年なら初日に有馬の指定席抽選のため深夜から並 ぶFとSは”普通”の時間に競馬場に着いた。
「昨日連絡なかったんですけど、今年はほとんどの席がカード抽選ですから、 集合はかけなかったんですかねえ」
「まあ、我々の馬がデビューするというのは黙っていたからよかったんじゃないか」
「単勝でも買われた日にゃあ予後不良なんてこともあるかもしれませんからね」
「まあ、いいや。2レースはそろそろだからパドックで待機するか」
とパドックに向かうFとS。
「2レースの馬たちが出ていきますね」
「うー、なにかおかしい」
「えっ、どうしたんですか」
「いや、師匠の気配がするぞ」
「まさか、そんなことないでしょう」
「ちょっと電話してみよう」と携帯電話をかけるF。
「もしもし、師匠ですか。いまどこですか?えっ中山に来てる。どこっすか? 3階のA指定ですか」と3階席を見渡すFとS。
「あ、あそこですよ」と師匠を見つけたS。手を振る師匠。
「今降りてくるとのことだ」とF。
師匠がパドックまで降りて来る。
「師匠、来ていたんですか」
「おお、今日は臨時要員を調達してな。お前達も呼ぼうとしたんだが、 連絡がつかんでな。まあ来週頑張ってもらえばいいからな」
「えー、今年も結局並ぶのか!」と思うFとS。「わかりました。頑張らして 頂きます」と言いながら目が泣いている。
「そんなことより、お前達なにしに来てんだ」
「いや、その・・・」
「ははは、俺には判るぞ。どうせまたシルクの駄馬でも買ったんだろ。 次のレースには2頭も出てくるからな。でもどちらも大して印もないな。 まず勝てんだろうな」
「そうなんです。実は一応デビューなんです。4番のシルクヘリオスって馬です」
「うーん、こんな馬、俺が単勝買ってやっても負けるぞ」
「そんなことされたら絶対勝てへんやろ」と思うFとS。
「いや、そんな畏れ多いです。デビュー出来ただけでも良しとしなきゃいけませんからね。 競馬の世界は」
「まあ、それもそうだな。お前達が買ってもデビュー出来たんだから、 よほど運の言い奴かもしれんな」
むっとするFとS。ここで話題を変えて「明日は偽GTの阪神S歳牝馬Sですが、 どれが勝つんですか?」
「まあ、名前だけのGTだがな。とりあえず本命は、3歳とは思えない精神力と勝負根性を、 新種牡馬エンドスウィープから引き継ぐアルーリングアウトだ。今が正しく 旬の時期。強敵はここを照準を合わせてきた、実績ナンバー1の地方馬エンゼルカロ。 アウエーのビハインドを覆すだけの実力は十分にある。そして前走を叩き台に してきたレースセンス抜群のゲイリーファンキー。この3頭の三つ巴だろうな」
「三つ巴ですか。ってことは他に気になる馬はいないってことですか」
「まあ、ワイドも始まることだし、瞬発力が高いウォーターポラリスも豊マジックに 期待して、他も人気がないなら少々押さえておくぞ」
「なるほど、わかりました」
「まあ、こんな3歳のレースなんかにつぎ込むなよ」
「ええ、わかってますよ」
「おお、でてきたぞ」

↑これが本物のシルクヘリオス。覇気がないぞー!

「どれもまだ3歳でちゃかちゃかして子供だな。それにしても 太いのが多いな。さすが新馬戦だ」と師匠。
「1番にもう一頭のシルクがいますね」
「シルクコンバットって馬か。俺たちが買った馬より高いな」

↑こいつがライバルのシルクコンバット


「というと着順も上ってことですか」
「そうかも知れんなあ。でも両方とも印がほとんどないから駄目って ことだろ」」
「そういえば、僕の知人の知人が、シルクの会員でコンバット持ってる らしいんですが、ゴールではヘリオスの前にいるはずだといってたらしいですよ」
「なに、じゃあこいつにだけは負けてはいかんぞ。負けたら馬刺しに してやる」
「ところで1番人気のシンコウミラクルってちょっとうるさい感じですが、馬体は いいですね」

↑1番人気シンコウミラクル。やはり強そう

「お前にもわかるか。勝つのはこの馬だ。いまはうるさいのが気がかりだ が、新馬戦で静かなほうよりはいい。お前たちのは馬は太くもなく、 ちゃかついていないが、なんかずぶいなあ。こりゃ走らんぞ」と師匠。
「ギクッ。そう思いますか。調教も大幅遅れで叩いても反応が鈍いと 厩舎コメントが載ってました」
「まあ、そんなところだろうなあ。じゃあ俺は席に戻るからな。 まあ馬券はほどほどにしておけよ」と立ち去る師匠。
「じゃあわれわれも馬券を買ってレースを見ましょう」とパドックを去る2人。

「さあ、いよいよ出走ですね」
「新馬戦だからとりあえず先行しろよ」
「ヤネが大塚ですから、そうしてもらいたいですね」
そして発馬。いきないり後方に置いていかれるシルクヘリオス。

↑発馬直後。先行できないシルクヘリオス

「おい、なんだありゃ」
「後半ずぶいから中山のダート1800選んだっていうのに これじゃ、もう終わってますね」
道中なかなか前に行けないヘリオス。そして勝負どころ3コーナー から4コーナー。各馬いっせいに前になだれ込む。
「あのー、まだ中段なんですが」

↑新馬戦でこんな位置でどうする!

「いや、これからだ・・・」と力のない返事をするF。
「シンコウミラクルが馬なりでハナにたってますよ」
直線と他馬を離し先頭たつシンコウミラクル。完勝のゴール。 そして遅れて各馬もゴール。
「やっぱりミラクルは強かったですね」
「ところでヘリオスは何着だ」
「6、7着って感じですが」
競馬場の画面上ではゴールシーンがスローで再生される。
「1、2、・・・7着ですね」
「あー、掲示板は無理だったか。おっ、もう一頭のシルクが 後ろにいるじゃねえか」
「あのー、後ろに1頭しかいないってことは13着ってことですよね」
「おー、ブービーか。よしっ、勝ったぞ、もう一頭のシルクには勝ったぞ」
「そうですね、レースには負けたが勝負には勝ったってことですね」
「こっちは7着で向こうは13着。大差で俺たちの勝ちだ」
「いやー、気分いいっすね」
「よし、これでひと一叩きされた効果が次でるぞ。こんどこそ 勝てるぞ」
「じゃこれから祝杯を上げにいきましょう」
「おお」
まったくノー天気な2人であった・・・


(更新12/4)

ホームページに戻る


この物語は、本当のことも書かれておりますが、基本的に フィクションです。実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません。また関係者?以外 の方が読んでも内容がよく分からないと思います。御質問があればメールをお送り下さい。答えら れる範囲でお答えしたいと思います。