同時進行!!ウィークリー馬券物語

53回: 菊花賞

「お前達、まだ髪の毛があるじゃねえか」と師匠。
「いや、その・・・」とどもる弟子達。
「俺の言った通り、スペシャルウィークが最強ってことがわかったか。
俺の言葉が信じられないなら坊になるか」
「いえ、坊主は勘弁して下さい。師匠の予想なら目を瞑っても信じます」
「まあ、お前達のような未熟者に信じられなくとも、俺の予想は常に 当たるからな。いいかよく聞け。菊花賞の勝ち馬教えてやるぞ」
「ははあ」と土下座する弟子達。
「いいか、ダービーの3着までがそのまま顔を見せ、状態は3頭とも絶好調。3強で決まり という下馬評だが、京都の高速馬場前残りの展開、そうすんなりいくのだろうかイメージが 沸いてこない。実力は断然でも、3000メートルでは何かが起こりそうな気配だぞ」
「いつもイメージだけで当たらないくせに」と思う弟子達。
「言っておくが、おれのイメージを馬鹿にしたら先週のような目にあうぞ」
「えっ」
「お前達の考えていることぐらいお見通しよ」
「これは参りました。続きをお願いします」
「本命は1強といっても良い◎アドマイヤベガ。勝つときの着差は 僅かでも、豊に言わせれば『傍目に見ているほど苦労していない、いつも楽に 勝っている』とのことだ。今回も後方から差す競馬でハラハラドキドキさせてくれそうだが、 まず勝てる」
「我々もそう思います」
「まあ、これはお前らでも予想できる本命だな。で、対抗は○ナリタトップロードだ。 先行して4コーナーで他馬を突き放しそのまま粘りこむ、昨年のセイウンスカイと同じ 作戦でくるぞ。瞬発力では勝てなくとも、能力の高さと馬体の完成度はピカイチ で本番では逆転できると断言。安心して見てられる馬だ」
「対抗はナリタですか。そうなると単穴はテイエムですか」
「いや、距離が3000に伸びて、一波乱あるとすれば、血統的素質が魅力の▲ペインテド ブラックだ。まだ子供の走りだが、決してバテることがないだけに、前走の大敗は 度外視。一度叩かれ状態は急上昇、素質開花で大逆転のムードが漂ってくるぞ」
「ブラックはブラックでもタキシードでなくペインテドのほうですか」
「タキシードは母方の父がストームキャットで短距離馬ですからね」
「そうだ。あと皐月賞馬△テイエムオペラオーの取捨がまた問題だ。前走の京都大賞典 は古馬相手の3着でトライアルとすれば理想的なレース。状態はさらに上がり、瞬発力で は4歳ナンバーワンの切れ味。しかし後方一気の先方では、今の京都では届かず押さえ までだろう」
「だんだんレースが見えてきました」
「まあな、お前達のような鶏の脳みそぐらしかないやつにもわかるように 話してやってるからな」
「あんたも鶏ぐらいの脳みそしかないくせに」と思う弟子達。ここはぐっと 堪えて「あと気になる馬はいませんか」
「いずれにしても、今回の菊花賞は展開がはっきり決まっている。逃げるナリタ に絡むブラック、そこにベガがオペラを引き連れて急襲。馬券はベガを中心に 3点と前残りを1点大穴に押さえる最後に馬が走るのではなく、人の意思が レースを作るとすれば、鞍上に世界の蛯名を配した(注)ラスカルスズカの 好走を期待したいな」
「おお、ラスカルも来るかもしれないってことですね」
「まあ、確率は低いがな。そんなところだ」
「ありがとうございました」
「まあ、今度の菊は猿でもわかる簡単なレースよ」
「我々も猿以下にならないよう頑張ります」
「じゃあ、俺はこれでな」と夜の街に消える師匠。

(弟子達の会話)
「やっぱりべガか」
「京都新聞杯で宿敵ナリタに完勝ですからね。師匠じゃないですが、ベガ で決まりでしょう」
「2週連続で豊か」
「それも面白くないといえば面白くないですね」
「大方の予想を裏切ってスペシャルウィークが秋天を優勝、ここは 大方の予想を裏切ってベガが負ける、なんてシナリオをJRAが考えてたりして」
「その方が面白いな。ま、こんな堅いレース見送りの方が良さそうだけど」
「でも師匠はテイエムを△にしてましたね。勝負はテイエムの単でしょ」
「僕はベガ・ナリタ勝負なんですけど、師匠と同じ予想になってしまいました」とT。
まさか、両方コケる?!と思うFとS。
「ふーん、そうか。じゃあ勝ったらT君に焼肉でもおごってもらいますか」
「それがだな、S君は200円ながらも2週連続でGTを当てて我々に焼肉を おごったことになっているが、現実世界ではおごってないとクレームがついているぞ」
「えっ、この世界ではちゃんとおごったじゃないですか」
「バーチャルリアリティでは許せても現実界の俺は許せん」
「なんか映画の”マトリックス”みたいじゃないですか」
「俺達は君の書いた”マトリックス”の人間か」
「じゃあFさんにはキアヌ・リーブスの役をやってもらいましょう。映画ではメチャかっこ良かった でしたよ」
「そんな役より現実界でちゃんと焼肉おごれ」
「えっ、駄目ですか。わかりましたよ、今度おごりますから」
「よろしい」
果たして本当に焼肉は食えるのでだろうか?


(更新11/6)

ホームページに戻る


この物語は、本当のことも書かれておりますが、基本的に フィクションです。実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません。また関係者?以外 の方が読んでも内容がよく分からないと思います。御質問があればメールをお送り下さい。答えら れる範囲でお答えしたいと思います。