同時進行!!ウィークリー馬券物語
止まらない木ブルース

第10回:新潟遠征第三弾

例年恒例の○田一門の新潟再遠征が、先日の8/29・30に盛大?に行われてしまった。
今回の参加者は東京から師匠A氏、一番弟子F、直参旗本K、普通の弟子S(=作者らしい?)、 一門とは関係ない競馬通HA氏。
新潟現地組からは、現地駐在員ST、「俺をサイレンスと呼んでくれ」のOMが参加。
残念ながら現地組HI氏は奥さんが臨月を迎えており参加を断念。OMに新潟の直線を託した。

8/28前日
「すごい雨ですよ。これでも行くんですか」と弟子Sが一番弟子Fに尋ねる。
「当然行くぞ。それも在来線でだ」とF。
「えっ、グリーンじゃないんですか」とS。
「そうだ、まわりの景色はグリーンだ。鈍行で行ってまわりの緑を見ればいいじゃないか」
「あのー、ちょっと違うんじゃないんですか」
「バカヤロー。俺達に足りないのはハングリー精神だ。新幹線なんか使わず新潟にいくぞ」
「わかりましたよ。でもそんなんで勝てるんですか?」
「それはわからん。とりあえずお前は9時までに大宮だ。OMとは長岡で待ち合わせだ」
「ひょっとしてこの雨で不通になってたりして」
「それは普段の行い次第だ」
「で、師匠は?」
「HAさんとKと新幹線でだ。当然グリーン車だろう」
「いいなあ」
「つべこべ言わず明日遅れるなよ」

8/29:1日目
やはりこの大雨はやまず。上越線は一部不通 でこのままでは在来線では新潟には行けない。
朝9時前には比較的大きな地震があり、 はやくも波乱の気配が・・・。
在来線組。高崎線の車中。「さっきの地震けっこう大きかったですよ。 もしかしたら電車とまっちゃうかもと 思いましたよ。ところで上越線が一部不通なんですが」とS。
「とりあえず高崎までいってからだな」とF。
「やっぱり普段の行いが悪いんでしょうか」
「それなら師匠のほうがよっぽど悪いんじゃないか」
そのころ新幹線組、東京駅。「たくーっ、なんで地震なんか起こるんだ。電車のろのろじゃねぇか。
楽しい新潟旅行の前になぁ」と師匠。
「あの師匠」とKが前を指差して。
「なんだ」
「地震で新幹線が遅れています」
「あちゃー。最初からついてないな」
やっぱり普段の行いは良くなかったということか。

再び在来線組。高崎到着。「やっぱり不通か。これじゃ新幹線で長岡まで行くか」とF。
「そうですね。これじゃ仕方ありませんよ」
「とりあえずOMに連絡して長岡で待ち合わせだ」
「あれ、こんなところにダルマが祭ってありますよ」
「よし、必勝祈願だ」と二人とも小銭を財布から出す。
チャリーン。「あれ、落としちまった」
「それって縁起悪いっすよ。あっ、俺も落としちゃった」
「まさか、これって新潟でお金を落としていく暗示か(注1)」
(注1)当然、ここでは新潟競馬場で負けてお金を落としていくということをいっている。
そして新幹線の改札へ。「あっ、電車遅れてますよ」とS。
「ひょっとして朝の地震のせいか」
「そうみたいですね。とりあえず切符買って乗りましょう」

長岡へ到着。ここでOMが合流。在来線で月岡を目指す。
「OM、おまえ頭が芦毛になってるぞ」とF。
「いやー、最近苦労が多くてですね。でも(メジロ)マックイーンのようでしょう」
「いや違う。それはホワイトストーンだ」
「やめて下さいよ。師匠の悪運が移るじゃないですか」
「もうじゅうぶん移ってるぞ」
「それより今日のメインどうする。師匠に頼めますかね」とS。
「よし。師匠の携帯に連絡だ、OM」
「はい」と師匠の携帯に連絡をとるOM。
「あ、師匠ですか。今いいですか。あの今日のメインは何ですか。 えっメジロですか。じゃテイオージャは?」
一同緊張感につつまれる。「要らない。わかりました。僕は1−12一点2000円お願いします」
「俺はこれのボックス」とメモを渡すS。「万券のボックス。遊び遊び」
「じゃー師匠お願いしますよ」と電話を切るOM。
「なんとテイオージャ消しかでメジロか」
「僕はウィンラックの前残りと人気通りテイオージャの一点ですよ」
「どう見てもテイオージャの軸は堅そうだな。師匠またやっちまいそうだな」とF。
「でも師匠が勝たないと今夜の飲み会は質素ですよ」とS。
「あっ」と一同沈黙。
その後列車は月岡に到着。途中新幹線を使ったため予定より1時間以上もはやくついてしまった。
旅館には2時半まえに到着。

「おい、この旅館客がいないぞ」とS。
「あたりまえだ。われわれがはやすぎるんだよ。2時半に温泉旅館に入るやつがいるかっつうの」とF。
「ここにいた・・・」とOM。
「それより競馬中継見よう。終わったら温泉につかるか」とテレビのスイッチをつけるS。
「そういえば今回はHIさんは来れないの」とSがOMに聞く。
「ええ。お子さんがそろそろ生まれそうなんですよ。 でも入院してたら行けたのにって言ってましたよ」
「どうして?」
「入院中なら競馬に行ってるのがばれないじゃないっすか」
「あっそうか」
「ところで双子らしいぞ。それも男だ」
「というと名前を二つ考えないと。うーんタイキとシャトルでどうですか」
「いやシャトルとパールでダブル国際GT兄弟ってのどうだ」
「いや兄弟といったらハヤヒデとブライアンでしょう」
「タケヒデも入れてやれ」
「他にダブリンにダンスもいるぞ」
「それじゃダブリンとつけられたほうは未完の大器のまま終わってしまう」
「アマゾンとナイルはどう」
「それは姉妹。牡の双子なんだからな」 「なら豊、幸四郎は。ちゃんとした人間だ」
「まだある。賀一、典弘は」
「おっと大事なのを忘れていた。大知、未崎の柴田ブラザースはどうだ。これなら 本まもんの双子だぜ」
こいつら人の子供だからって言いたい放題。
「いっそのこと師匠につけてもらったら」
「そ、そ、それは・・・」と一同下を向いてしまった。
その後テレビではメインの実況が始まる。重の馬場をマイペースで逃げるウィンラック。
結局そのまま行った行ったでウィンラックが1着。2着には人気のテイーオジャがはいり見事 OMが的中。
「やった俺の予想通りだ」と叫ぶOM。「よしこれで旅費代がでた!」
「でもメジロはやっぱりこなかったな」とF。
「あーあ、コンパニオンはお預けか・・・」とS。
「いや勝ち頭のOM君がいますから。ご馳走様です」とF。
「私もご馳走になります」とS。
「そんなに勝ってないでしょうが」とOM。
「とりあえず中継も終わったし風呂にいくか」
風呂から出てしばらくすると競馬場組が到着。
「師匠勝てましたか」
「あー、あー駄目だった」
「あの僕の当たり馬券でこの前の分と今回の分相殺して下さい」とOM。
「そんなのもうとっくに換金して12レースに使っちまったよ」と師匠。
「それって貸し渋りの銀行がいつのまにか預金と貸し出しを相殺していたなんて ことと同じじゃないですか」とS。
「師匠だっていま貸し渋りで苦しんでいるんだ」
「大きなお世話だ。それよりメシは6時すぎからだ。じゃ俺達はひと風呂浴びてくっから」

宴会といっても夕食が始まる。明日の必勝を祈って乾杯するが・・・。 「夕食後はすみれ(注2)にいくぞ」と師匠。
(注2)近所のスナック
8時過ぎに「すみれ」に入る。
「いらっしゃいませ」 「ママさん、こんいちは」と師匠。「今日は6人で」。ちなみに直参のKは風邪でダウンしていた。
焼酎のボトルをオーダーし、ウーロン割りで乾杯。
「女の子呼びましょうか」とママ。
「お任せしますよママ」と師匠。この「お任せ」が後の悲劇を生むとはこの時誰が予想できた であろうか。
「じゃ3人ぐらい呼びましょうか」
「ええ」
しばらくして店の奥で連絡をつけていたママが師匠のところへやってくる。
「すいません。なかなか集まらないんですよ。天気が悪い割にはどこも宴会が入ってるみたいですね。 うーん。あっ、あのこあたり、でも・・・お客さんたち東京できれいな人見慣れてますよね。お気に めすかねぇ。うーん」
「お任せしますよ」と再度師匠。
「そうですか。とりあえず見繕ってみましょう」とママ。

しばらくして和服をきた女性が2人現れる。とりあえずHAと師匠の間に1人、師匠とSの間に1人入る。 だが突然師匠がトイレといって席を立つ。なにか嫌な予感が熱海(注3)経験者のFとSの脳裏に。しかし 今回Fのほうについたのは普通の子であった。生け贄はSか!
案の定師匠は席に戻って来ず離れた席で爆睡モードに突入。
「師匠が戻ってこないよー。誰かおれを助けてくれ」とSの視線が皆に向けられる。 しかし誰一人師匠の空いた席につこうとす者はいない。とりあえず横のどうみても40過ぎに見える オバさんと会話を始めるS。しかし会話がかみ合わない。 黙々と飲み始まるS。
向こう側では、Fがおねえさんと楽しそうな会話をしたり、HAが陽気にカラオケを歌っている。
「こんなはずじゃなかった。おいMOこっちきて俺を助けろ」と視線をMOに向けるS。
当然目を合わさないMO。「あいつ無視しやがって。誰か助けてくれ」と心のなかで叫ぶS。
刻々と時が経ちもう一人やって来る。今度はTとSの間に入る。そして師匠が戻ってくるが 一番はじのSTの横でまた寝始めてしまった。
「一人増えたんですからどなたか真ん中に入りませんか」とママがSTを促して師匠の座っていた ところに座らせる。
「よし。助かった」と微笑むS。しかし数分後トイレにたつST。「ま、まさかこいつも」
予想は的中。STは向こうの方の席でカラオケの曲選びに走ってしまった・・・
そうこうしているうちに時計の針も11時を廻る。「師匠もう11時ですよ。そろそろ行きますか」 とSが師匠を起こす。
「おう、うー、そうか。そろそろ出るか」と眠そうな師匠。
「ママお勘定して」とS。
「はい」とママ。「こんなんなります」とメモをMOに手渡す。
そのメモを覗いてFが「ひとり1万か」と払う気もないのに言う。
「うん。じゃ1人1万」と師匠。なんと弟子達と割り勘になってしまった。資金繰りがきついとはいえ 美人が来ていればと悔やむ弟子達であった。

8/30:2日目
翌日各自適当に朝風呂を浴びて朝食へ。
「これからの日程はどうするんですか」とS。
「とりあえず指定席のキャンセル待ちをしてみよう。2〜3枚は取れんだろう」と師匠。
「われわれは」とMO。「お前達は下界で十分だ」
「師匠が指定なら適当に一般席をとってみますよ」とF。
「なんだ今年は走らないのか」とS。
「じゃ8時過ぎに先発隊として出ますよ」とF。
「でも昨日の晩のあれはすごかったな。熱海での俺の気持ちがわかっただろう」とF。
「うっ」と朝食を戻しそうになるS。「きのうすぐ寝たじゃないですか」
「なに言ってんだよ」
「たしかにすごかったな。俺は見た瞬間睡魔に襲われたぞ」と師匠。
「ついてねぇな。土砂崩れで上越線は不通だし、地震で新幹線は遅れたし。最後に駄目押しであれだ もんな」とS。
「いや、駄目押しは今日の競馬だ」とF。
「不吉なこと言わないで下さいよ。今日はばっちし取り返しますよ」

そして競馬場。師匠とHAは指定が取れたので上の階で観戦。それ以外の者達はややゴール前の コンクリートの席で観戦。あいにくの雨で芝生組が一般席に流れてきており普段より混んでいる。
「けっこう混んでんな」
「ええ、雨降って芝生の人達が一般席に来ますからね」
「まあいいや。さっそく検討だー」
その後、一同淡々とレースを消化。7レースが終わると師匠がやって来て「俺はもう市内に行くぞ」
「あれっ、もう帰っちゃうんですか」
「あした半日休みだから今夜のために力を温存しときゃなかならんからな」
「えっ泊りですか」
「あったりめーよ。ま、ちょっと金もつきたし。もう後のレースは買っちまったからな」
「俺も疲れた。金も尽きたし師匠について行きますよ」とFがはやくも敗北宣言。
結局、師匠、F、Kが新潟市内へ出発。
「珍しいな師匠が競馬きり上げて出ちゃうなんて」とS。
「今期3回目ですからね。確か新潟の友人と飲むらしいですよ」
「ふーん。それよりこの9レースの シンボリメロディーって俺の知人が小口場主で持ってる馬なんだ。 人気はないが彼を信じて俺は軸にするぞ」とS。
「メロディーはメロディーでも1番のタイキメロディーが勝つんじゃないか」とSTが小声でつぶやく。
「それよりTに電話して単勝1万円ぐらいでも買ってもらうか」と言って携帯でTにかけるS。
「もしもしSです。9レースSAさんのシンボリメロディーが出ますよ。買わなくいいんですか。なんなら 単勝1万円つっこんどきますよ」
「要らん、要らん。絶対に要らないですよ」
「あなた、SAさんてあなたのお客さんじゃないですか。確かに近走の成績は悪いけど、ちょっと ぐらいは買いません」
「けっこうですよ。彼が買うんだから来ないでしょう」
「そうですか。そこまで言うんならわかりました。それじゃ」と電話を切るS。
結果は案の定シンボリメロディーは馬群の、それもさらに後方に沈む。勝ったのはのメロディーは メロディーでも@タイキメロディーであった・・・
「メロディーはきたが・・・」と絶句するSであった。

そしてメインの新潟記念。

「師匠もう市内のホテルにいるそうだぞ。俺達もメインの前に出るか。駐車場からでるの時間かかるからな」と 指定にいるHAから携帯にかかってくる。
「じゃあこれからメイン買いますから下で待ってますよ」とMOがこたえる。
「ところで師匠メインなんて言ってったっけ?」とS。
「ルミネッセンスって言ってましたよ」とMO。
「えっ。うーんそうか。ハナから消していたからなあ。というと人気どころできまっちゃうのか」とS。 「オフサイド−ブラボーで堅いのかなあ」とST。
「いや(馬連)一番人気で10倍近いオッズってあんまりこないんだよな。だから夏は牝馬で軽ハンデで でさらに重賞実績のあるプロモーションを軸に勝負だ」とS。
「ぼくはガールスカウトの前のこりと見てますよ」とOM。
「おまえ昨日のウィンラックのパターンだな」とS。
「ええ。今日も重馬場ですからね。ハンデも49キロですよ。前走負かしたブラボーが54キロなんですから ね。オフサイドなんて58キロですよ。この馬場で58は厳しいんじゃないですか」とOM。
「そうか。でも俺は前場の益もすっかり吐き出して、やられも片手にのりそうなんだ。ここは人気薄の プロモーションで取り返さないと」とすっかろオッズに目が眩んでいるS。
そうこうしてみな馬券を買って駐車場へ向かう。
「そういえばSさん、札幌買いました」とOMがSに尋ねる。
「いや、どうせスーパーナカヤマから買っちまうんだからやらないことにしたよ。どうせこねえだろ」とスーパー ナカヤマと心中を重ねてきたSがこたえる。

車中ラジオ中継。 ”ブラボー先頭、ブラボー先頭、後ろからオフサイド、オフサイドトラップ、後ろからオフサイド トラップが突っ込んできた。ここでゴール。ややオフサイドトラップ体勢有利か”
結局人気通りであった・・・ 「なんだ人気通りかよ。スガノオージ良く見えたんだけどな」とHA。
「ああやられちまった。ちきしょー」とOM。
「プロモーションのプの字も出てこなかったなあ・・・」とS。
「へへっ」とSTが運転中にもかかわらずおもむろに馬券をポケットから出す。 なんとそこには当たり馬券が!
一同「あー」とため息がもれる。
「そうか。俺も手堅くいけば良かったかな」と残念がるS。「ちなみに札幌は?」
ちょうどその時ラジオから札幌の結果が流れる。
”1着5番。2着7番・・・”
「5−7で1900円か。ん?なに5番って スーパーナカヤマじゃねえか。くそー、札幌で 勝負しておけば良かった。あー」と絶句するS。
「やっぱり昨日の夜からついてないね」
「大きなお世話だっつーの」

新潟駅に到着。ここで車を出した現地駐在員のSTが帰宅。HA、S、MOでホテルにいる師匠を訪ねる。
「やられました・・・」
「そうか」と意外に明るい師匠。どうやら遠征つき夏競馬も最後でハイになっている。
「ところでFさんは」
「あいつ帰ったぞ」
「えっ」
「金がないって駅前の銀行によったあと帰っちまったぞ。金ならいい機械を紹介してやるといったんだが なあ」と師匠。
「それって・・・」
「まあいい。俺とKは今晩泊まっていくから、ちょっと飲んでから帰るか」とHAとSに尋ねる師匠。
「ええ。その前に新幹線の切符とっておきたいんですが」とS。
「ああ、窓口通るから大丈夫さ」と師匠。

みどりの窓口に到着。すでに帰りの切符を取っていたHA。それもグリーンだった。
「予定より早く切り上げたからもっと早い時間の列車に替えよう」というHA。
「えっ、グリーンですか?」とS。
「うん。もうグリーン買っちゃったから」
「競馬で負けたしなあ。自由でいいんですけど」
「この時間のグリーンって、競馬中継が終わったさとう珠緒 が乗ってるかもよ」とHA。
「本当っすか。わかりました。わたしもグリーンにします」とグリーン席を購入する安直なS。
切符を買い終えた後つぶやく師匠「あいつらの乗る列車って、馬主のじじいばばあが多いやつだな。 もうちょっと遅い列車だと思うんだがなあ」
そんなことに気づかず浮かれるS。「いやー、負けたけどグリーンで帰るなんて豪勢だなあ」
結局、HA、Sの乗ったグリーン車にはさとう珠緒はいなかった。師匠の予想通り競馬関係者らしきじじい ばばあが多かった。競馬は当たらないがこういう予想は的中する師匠であった。


こうして一門の今年最後の新潟遠征は幕を閉じた。秋には石和(温泉)で毎日王冠が待っている。 いや、それよりはやく熱海にウィンズをつくってもらいたい。こんどこそ 熱海でいい思いがしたい と願う一門であった。

(更新8/31)

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この物語は、本当のことも書かれておりますが、基本的に フィクションです。実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません。