同時進行!!ウィークリー馬券物語
止まらない木ブルース

第48回: 宝塚記念

「いよいよ前半戦を締めくくる宝塚記念ですね」
「師匠ビシッとここは決めて下さいね」
「それでは宝塚記念の勝ち馬教えて下さい」と弟子達。
「このレースは簡単よお。お前達のような未熟者でも解るレースだ」
「というと、やはり勝つのはスペシャルウィークですか」
「まあ、そういうことだな。夏の宝塚、ファン投票のドリームレースというには 寂しすぎるメンバー構成だ。当然ここは春の天皇賞を制したスペシャルで断然 の一戦だ。年内4戦で引退を表明、シンジケートも組まれ事実上全勝宣言。 関西のラストランならば、競馬に絶対はある、負けようなない」
「競馬に絶対はある?!凄い自信ですね」
「自信ではない。真実を予言してるまでだ」
「予言といえば、人類が滅ぶ兆候はまったくないなあ」
「どっかの予言者といっしょで結局当たらなかったりして」
「なにごちゃごちゃ言ってるんだ」
「いえ、なにも。続きをお願いします」
「あと、ここに衝撃のニュースが舞い込んだ。エルコンドルパサーが フランスのGTサンクルー大賞典を快勝、凱旋門賞の有力馬の一頭に 名乗りをあげた。ホームでは勝てても、アウェーでは健闘どまり、それが 世界に壁だったが、そんな競馬サークル内の常識を打ち破ってくれたな」
「それはおっしゃる通りなんですが、これとなんの関係が?」
「まあ、続きを聞いてろ。そこで、グラスワンダーだ。前走の安田記念 、ハナ差でも勝っていれば、この宝塚記念、5歳最強馬決定戦として、昨年 の毎日王冠なみに盛り上がっていたはずだ。しかし、まさかの取りこぼし、 しかも夏バテ気味では陣営のトーンは上がらず、能力的には互角なのに 勝負ありの感だ」
「確かに今のスペシャル相手では、グラスでも完調ではないと厳しいでしょうね」
「そうだ。あと、この3頭にセイウンスカイを加えれば、史上最強世代の5歳牡馬 。一度でいいから、この激突を観てみたいというのが競馬ファンの夢だろう。 潜在能力は横一戦と見ていたが、春の戦績からスペシャルが一歩リードしたところ を、エルコンドルが抜け出していったか」
「そうですか」
「いずれにしろ、今回は見るレースだな。武豊スペシャルウィークが2馬身の セーフティリードで完勝だ」
「2馬身の完勝ですか!」と驚く弟子達。
「そうだ。グラスも馬体が並べば面白いが、そうはさせてくれないだろうし、 無理もできない。ジャパンカップか有馬か、最終決定戦まで楽しみは取っておこう」
「そうですか。やはりこの2強できまりですか」
「まあ、そう言いたいことだが、敢えて馬券を買うなら、またかと言われてもローゼ ンカバリーだ」
その通り「またか」と思う弟子達であった。
「7歳にしてブリンカー無しでやっと折り合えるようになり、前走2年6ヶ月ぶりの 勝利。雨でも降ればひょっとするかもな」
「ひょっとしないですよ」と思う弟子達。
「まあ、こんなところだ。今のスペシャルの実力は、お前達の頭でも理解できるだろう」
「ええ、師匠のおっしゃる通り、エルコンドル以外今のスペシャルにかなう馬はいませんね」
「そうだ。まあ、安い配当になりそうだから楽しむ程度にしておけよ。新潟遠征も近いからな」
「もう新潟?ですか」
「そうだ、新潟でお前達を鍛え直すぞ」
「いや、あの・・・」
「わかったな。財力も温存しておくんだぞ。じゃ俺はこれでな」と何処にか消える師匠。


(弟子達の会話)
「こりゃ誰が見ても、スペシャル・グラスで鉄板だな」とF。
「前走とりこぼしたグラスにスペシャルが負けるわけにはいかないでしょうね」とS。
「あと豊が凄い気合だよ。昨年後半セイウン・エルコンドルに完敗。年明け セイウンには雪辱して天皇賞馬になったけど、今度はエルコンドルがフランス のGTを完勝。それも欧州競馬の王道2400Mで。やっと現役日本最強に なったとおもったら、あちらは『世界』のエルコンドルパサーになっちまった。 このままいけば、ジャパンカップでぶつかりそうだが、あちらは凱旋門賞が 大目標。スペシャルに負けたとしても言い訳されてしまう。だから、ここは 絶対勝って、ファンの声で引退スケジュールを変更してまでも、 スペシャルを凱旋門賞に送ってほしいみたいだな」
「そうですね。あとエルコンドルがサンクルー大賞典をあっさり勝つなんて思ってなかっ たじゃないですか。勝ったことで、エルコンドルは凱旋門賞狙いで最悪JC・有馬は 見送り、そんなことになるかもしれない。確実に勝負するにはオーナーの決定を覆して 凱旋門賞にいくしかない。そのためにもここは勝ってファンの声でどうにかしたいって 感じのコメントしてますね」
「でもエルコンドル側もスペシャルが凱旋門賞に来てくれるのは歓迎かもしれないぞ」
「えっ、どうしてですか」
「今度は本物のGT、欧州勢は意地でも日本のエルコンドルには勝たせたくないだろうよ。 徹底的にマークして潰しにいくだろう。スペシャルがでればその分マークが薄くなるからな」
「そうですね。ところでこれのレースって馬券買います?」
「いや、見てるだけでいいんじゃないの」
「そうですよね」
「僕は買います」と昨年スペシャルに先行投資していたT。
「1点勝負か?」
「いえ、グラスが消えるんじゃないですか。そこで スペシャルから数点流します」
「グラスが消える?」
「ええ、京王杯・安田記念の激走の反動や夏負け、初遠征など ネガティブな要因が多すぎますね」
「それはそうだけど、仮にもGT馬だよ。で、スペシャルの相手は?」
「スエヒロコマンダー、スティゴールドあたりです」
「上がり馬スエヒロか。うーん、こういう穴人気の馬が本番できたことはないぞ」 「それにスティですが、去年は春天2着の実績があってのもの。今年は使い詰めで 連対なしじゃ厳しいですよ」
「えーそうですか。うーん」と唸るT。
「俺は逆転があるならやっぱりグラスだと思いますよ。今のスペシャル は先行押し切りのパターン。後ろから差されたことがないので、相当 自信を持って押し切るつもりでしょう。スキがあるならこの点。 でもやはり可能性は低いかなあ」
「あとおもしろいのは、安勝が出てくることによってヒコーキグモが積極策 で逃げるんじゃないか。そうなると、キングヘイローは折り合いがつけやすい」
「えー、キングですか」とT。
「叩き2戦目に良績もありますからね」
「じゃーやっぱりキングも押さえておきます」
「俺は、まあー見るだけにしておくよ」とF。
「僕もそうしようかな。やるなら馬連はスペシャル・グラス の1点。勝負馬券はグラスの単ですね」とS。
「ところで新潟遠征はどうする」
「どうせ3回ぐらい行くんですから、最後の回に いくつもりですが」
「そうだよな。毎回行ってたら財布の中がもたねえよ」
「でも、カード保有者は貴重だから来いってプレッシャーが・・・」
「なら、お前行って来いよ」とTに話しかかるF。「まだ1回も遠征に行ったことないだろ。 新潟は楽しいぞ」
「あんなとこどこが楽しいんですか」と昨年の悪夢を思い出して憮然とするS。
「まあ、まあ今年はいいことがあるかもな。で、どうする?」
「いや、あの、やっぱりカミさんの許しが出ないもんで・・・」
「ならカードだけでも貸してやったらどうだ」とF。
「おみやげたくさん買ってきてくれるぞ」とS。
「でも、どうせ僕のカードで買ってくるんでしょうが!」とT。
「その通り!」


(更新7/9)

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この物語は、本当のことも書かれておりますが、基本的に フィクションです。実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません。また関係者?以外 の方が読んでも内容がよく分からないと思います。御質問があればメールをお送り下さい。答えら れる範囲でお答えしたいと思います。