同時進行!!ウィークリー馬券物語
止まらない木ブルース

第28回: グランプリ有馬記念

「どうしてくれるんだ!」と突然孫弟子Tにあたる一番弟子F。
「ええ、なんでですか」と訳のわからないT。
「お前が万馬券なんか当てるから債券相場が暴落しちゃったじゃないか。10年ぶりの ストップ安だ」
「そんな、僕のせいじゃありませんよ」
「でも、こんな暮れに大やられしたらディーラーは年を越せたもんじゃないですね」とS。
「だから有馬で取り返すんだ」
「これで師匠が有馬を当てたらアルマゲドンで地球が滅ぶかも」
「なにアルマゲドン?」とそこにやってきた師匠が言う。
「いやあ、T君がスプリンターズを当てるもんだから、もうアルマゲドンがやってくるんじゃないかと 言っていたんですよ」とF。
「アルマゲドンって面白い映画らしいな。有馬で儲けたら映画館ごと借り切ってやろうか」
「頼みますよ師匠」と一同。しかし誰も映画館を貸し切れるとは思っていない。
「それより今週の債券は凄かったらしいな。まあ、8年も上がってりゃ下げるときもあるのはしゃー ないぞ。俺なんかいつも馬券が当たってるから、かんじんのGTで取りこぼしちまうんだな」と師匠。
「えっ、いつも?」と弟子達の表情。
「なんか言いたいのか」と弟子達を睨む師匠。
「いえ、めっそうもない。それより有馬記念ですね」
「いやー、今年もこれでおしまいですね」
「えっ、誰がお終い?」とT。
「それは、し、じゃなかった。レース日程が終わりってこと」
「はあ、そうなんですか」
「なに、下らない会話してるんだ」
「すいません。一年の締めくくり。ここは当てて気持ちよく年を越したいですね。 では師匠、有馬記念教えて下さい」
「そうだなあ。まず意外性のある世代交代が静かに進んでいる。 まあ、今年の4歳は強いってことだ。ジャパンカップ、スプリンターズ ステークスの結果を見れば一目瞭然だからな」
「というとやっぱりセイウンスカイですか」
「まあ、待て。そのセイウンスカイだが、京都大賞典で古馬をねじ伏せ 、菊花賞をレコードで快勝と4歳で年度代表馬狙おうかとの勢いがあるのは 確かだ。しかし」
「しかし?」
「しかしだ。そう簡単にいくもんだろうか」
「いくんじゃないんですか」と思う弟子達。
「実はこの馬、1番人気で受けて立つというレースをしたことがないのだ。 これは危険な香りがするぞ。まあ、馬券のトレンドとしては他の4歳馬の 出番だが」
「他の4歳馬が本命ですか?」
「いや、そこまでは考えておらん。やはりここは古馬メジロブライトだ。 天皇賞後、有馬一本に照準を合わしており、激戦で消耗している他馬に比べ フレッシュさが残っているぶん有利だ。しかも寒くなると走る馬だ。状態も 春の盾を制した勢いが戻ってきており、破壊力は一番だ」
「やはりブライトですか」
「そうだ」
「では対抗は?」
「豊とのコンビもこれが最後のエアグルーヴだ。最終調教は軽目もマイペース 。化け物だと恐れられた去年の実績はないが、今年のメンバーでも総合力は 上位の存在だ。フワッと乗って、スパッと差す豊マジックが炸裂だ。 セイウンスカイ覚悟だ!」
「マジックですか?」
「オグリの再現も有りうるぞ」
「はあ。わかりました」
「で、その他はなんですか」
「強い4歳世代の伏兵キングヘイローが展開上穴候補だ。その実力は4歳3強の 一角でそん色はない。菊花賞は距離が長すぎただけ。エアグルーヴがセイウンを 潰してくれるレースなら、その後ろから差してくるブライトとともに争覇圏の 一頭だ」
「4歳3強って、セイウン、スペシャルウィーク、エルコンドルパサーだと思う けどなあ」とつぶやくT。
「なんか言ったか」
「いえ、なにも」
「そうか。あと怪物復活ならばグラスワンダーが見限れない。昨年の朝日杯で見 せた豪脚がたたき3戦目で甦れば、血統的にもタイキシャトルの後継者はこいつ で決まりだ。まとめて差し切るかも知れんぞ。まあこんなところだ」
「あれ、セイウンは要らないんですか?」
「要らん。エアグルーヴに潰されてお終いよ」
「でも3000Mの世界レコードの持ち主ですよ」とT。
「要らんっていったら要らんのだ。絶対にこないぞ」
「そうですか。わかりました」と弟子一同。
「よくわかったか。当日は指定席だからってゆっくり来るんじゃねーぞ」
「わかってますよ。早めに行って師匠をお待ち致しますよ」
「ゴンドラでモーニング食べて作戦会議だからな。よし、じゃ俺はこれだな」と雑踏のなかに 消えた師匠。


(弟子達の会話)
「やっぱりブライトか」とF。
「師匠お気に入りですからね」とS。
「天皇賞で負けたぶんJCに行かなかったのはプラスですね。 中山の長距離は得意だし、春の実績通りなら、師匠ならずとも 重い印は打ちたくなりますね」
「エアグルーヴも去年よりいいんじゃないか。去年は天皇賞、JC と激戦だったけどしっかり3着は死守。今年は目いっぱいだったのは JCだけ。ヤネも豊に替わるし、引退レースだけど来るかもしれないな」
「なんか師匠の予想通りになるかもしれませんね」とT。
「今回に限りは・・・。なーんて。しっかりよいしょしておかないと師匠に 怒られるからな。どこでこのページ見てるかわかりませんからね」
「やっぱり師匠の消したセイウンがきそうですかね」
「そりゃ、菊花賞も勝った皐月賞馬だぞ。スピード、スタミナ文句無し」
「ブライトとの勝負付けも済んでますしね。逃げなくても勝てますよね」
「となると相手探しか。とりあえずセイウンから師匠の推奨馬4点」
「いや、グラスワンダーはもう過去の馬ですから。キングヘイローはヤネが今一つ ですし。同じ4歳なら師匠の推奨していないエモシオンが匂いますね。先週も 4歳世代交代って言っていたら、ほんとに4歳が来ちゃった。でも師匠の言った4 歳ではなかったけど」
「でも大外枠だから正面スタンド前で掛かるかもな」
「うーん、それはすごく心配しているんですが」
「じゃ手堅くエアグルーヴか」
「先週シーキングをタイキに先着させた豊のあの腕は凄いですね。引退レースですし あのオグリの再現も夢じゃないですよ」
「まあ、人気でもセイウンからは仕方ないですかね」
「いや、実は菊花賞のあと師匠の独り言をきいちまったんだ」
「なんですか?それ」
「有馬でセイウンスカイ殺したるって」
「殺すってそんな物騒な。あっ、僕も思い出しました。有馬ではセイウンの 単勝買うって確か言っていましたよ」
「そうか。うーん、師匠の大好きなスペシャルウィークをコケにしまくった馬だからな」
「でも単にセイウンがスペシャルより強かっただけじゃないですか」
「師匠はそうは思ってないぞ。本気で潰す気だ」
「というと有馬では、師匠がセイウンの単勝を買う!」
「師匠の単勝で沈んだ馬は数知れず・・・」
「セイウン危うしか・・・」
セイウンの無事を祈る弟子達であった。


(更新12/25)

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この物語は、本当のことも書かれておりますが、基本的に フィクションです。実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません。また関係者?以外 の方が読んでも内容がよく分からないと思います。御質問があればメールをお送り下さい。答えら れる範囲でお答えしたいと思います。