同時進行!!ウィークリー馬券物語
止まらない木ブルース

第19回:マイルチャンピオンシップ

「おい、やつはどうした?」
「えっ、Fさんですか」
「そうだ。この忙しいなかどこ行ってるんだ」
「新婚旅行ですよ」とS。
「なに、結婚だと。そんな話し聞いてないぞ」
「あっ、すいません。正確には知り合いの方の新婚旅行に同行してるということです」
「なんだ。そんなことだと思ったぜ。人の新婚旅行について行くより、自分をどうにかしなきゃなあ」
「それは師匠にも言えませんか」と心のなかで思う既婚の孫弟子T。
「で、どこ行ってんだ」
「バリらしいですよ」
「バリ?そんなとこに競馬場はあんのか」
「いや、ないと思いますが・・・」
「そうか。まあ、そんなことよりマイルチャンピオンの勝ち馬を教えてやるぞ」
「ぜひお願いしますよ。やっぱりタイキですか」とS。
「まあまあはやるな。まずは先週までのおさらいだ。先週まで4週連続1番人気馬の敗退。 それぞれ理由はあるにしても、そのレース運びはセオリー通りで、騎乗ミスはなかったな。 アクシデントを除けば豊やノリがペース配分を誤る訳はなく、想定タイム通り走ってりゃ 勝ちパターンのはずが、高速馬場に助けられて前が止まらなかっただけのことよ。 しかしなあ、ここまで正攻法で1番強い馬が勝てないの続くとはなあ」
「でもセイウンスカイなんか菊をレコードで逃げ切ったんですから本当に強い馬だと思いますよ。 ダービーだって前でやりあわなかったら2着はありましたよ。少なくともスペシャルウィークとは 勝負あったって感じですが」と菊でセイウン−エモシオンの第二本線をスペシャルウィークのせい で取り損ねたSが反論。
「お前は甘いぞ。何年俺の弟子をやってんだ。今言ったように高速馬場に助けられ て止まらなかっただけよ。次やりゃスペシャルの勝ちよ」と師匠。
「でも菊の2着馬って・・・」と言葉が続かないT。
「ホワイトストーンのように優秀な馬がたくさんでてますね」すかさずフォローするS。
「その通りだ。よくわかってるじゃねえか」
「続きをお願いすますよ」
「おお。今週は負けようがないぞ。頼むぞタイキシャトル」
「師匠に頼られてかわいそう」だと思う弟子達。
「唯一の不安は海外遠征帰りの目に見えない時差ボケ疲労だ。だがそれも追い切りの絶好 の動きで一掃だ。普通の状態なら勝てるはずが、それを遥かに超越した動きを見せてるぞ。 さらに鞍上が岡部でレースの主導権を握れ、しかも先行できる脚質、プラス材料ばかりだ」
「超越?!ですか」と弟子一同唖然。師匠がここまで言って来た試しはないが・・・
「そう。まあお前らの未熟な競馬経験ではわからんだろうがな」
「はあ」
「では相手はどれですか」
「まあこうなると、このレースを勝つもりでいる2番手グループ、シンコウスプレンダ、 シーキングザパールらの実力馬は苦しいぞ。それなら相手は無欲の追い込み馬ロイヤルスズ カだ。鞍上の南井とともに虎視耽々と狙ってくるぞ」
「シーキング、シンコウは消しですか。確かにシンコウは実績から考えると人気先行の気がし ますが、もう1頭の国際GT馬も消すんですか。さすが師匠ですね。で以下はなんですか」とS。
「以下は昨年の再現を期待しているのがキョウエイマーチだ。なにが何でもの逃げ宣言。桜の 女王復活といきたいところだ。岡部なら意外と前をかわいがってくれるはず。交わされるのはゴ ールちょっと手前だ」
「はあ。ところでビッグサンデーはどうですか」とT。
「おおっと忘れちゃならねえのがサンデー様よ。強いはずなのに全然話題にならないとはおか しいぞ。少々押さえておかないと悔いが残るぞ。お前らよくわかったか」
「はい良くわかりました」
「Fもバリなんぞ行かず、今日の俺の話しを聞いてりゃ世界1周だってできるのになあ。 まあお前達でFの分までしっかり稼いでやれよ。じゃ俺はこれでな」と夜の街に消えた師匠。

(弟子達の会話)
「超越だって」とS。
「僕も超越してると思うけど、師匠にああ言われると普通の馬に見えてきたなあ」とT。
「まあ、ここは師匠が◎を打っても負けることはないなあ」とS。
「でも、気になる点が・・・」
「えっ」
「いやね、昨年マイルCS、スプリンターズSを勝って、今年は安田記念、そして念願の海外G T制覇を成し遂げた。それは見事としか言いようがないが、最終目標はブリダーズカップだったはず」
「それは調整上無理で諦めたことでしょ」
「そこですよ、気になるのは。今のタイキにとってほしいものはBCぐらいでしょ。国内の 中短距離に敵無しで、すでにそのGTを3つとったタイキにとって、再びマイルCSやスプリ ンターズSに出る意味ってあるのかなあ」
「そこは勝って賞金を稼ぐことに目標を変えたんじゃないの」
「金は、種牡馬になって10数億稼ぐことがわかっているタイキにとって重要でないはず。 サイレンススズカのようなことだってあるし、むしろBCにいかず引退するんなら無事がな により。マイルCSやスプリンターズSに出して故障でもしたら、それこそ取り返しのつかな いことになってしまう。ここに隙があるんじゃないかなあ」
「うーん確かに、2度目のマイルCSやスプリンターズSを取ることより、今のタイキにとっ ては無事に引退することのほうが大事だ。そういえば最終の追いき切りはこの馬としては珍しく 速いタイムをだしていたなあ。遠征帰りはがれていて、その後体調を戻して太目になっていた。 それを絞るために速いタイムをだしたのかも知れん」
「それってスペシャルウィークが菊で負けたパターンだよ。あれも太目が解消できず最終追い切 りは速いタイムを叩きだしていた。こういう人気馬が調教で速いタイムをだすとマスコミは凄い・ 絶好・ド迫力などと持ち上げるんだ。でも結局は普通じゃないんだから本番では能力を発揮できず 人気を裏切る結果になってしまう」
「藤沢調教師は、毎回この馬に速いタイムは要らないと言っていた。それが今回は普段より速 いタイム。ひょっとしてタイキ危うしか!」
「師匠もタイキと言っていることだし」
「1番人気5連敗も」
「ないとはいえない・・・」


(更新11/20)

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この物語は、本当のことも書かれておりますが、基本的に フィクションです。実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません。また関係者?以外 の方が読んでも内容がよく分からないと思います。御質問があればメールをお送り下さい。答えられる 範囲でお答えしたいと思います。