「しっ、しっ、師匠生きていたんですね。貸し渋りにあってもうだめかと・・・」 とびっくりした表情で一番弟子Ｆ。
「あったりめーよ。俺が貸し渋りごときでいっちまうかよ。でも、 もう少しで公的管理になりそうだったぜ。あっはっはっ」と師匠。
「でも国有化されれば６０兆円も競馬ができますよ」
「そうか。俺もなんとか再生委員会に入ってりゃなー」とアホな会話をしている師弟達。
「でも無事でなによりです。師匠のありがたい教えがないと我々は馬券が買えません。 ましてＧ�Tを当てるなんて」とＳ。
「そうだな。お前達も俺の予想があるから生きていられるんだからな」
「ではさっそくですが、秋華賞はなにを買えばいいんでしょうか」とＴ。
「おう、まかしてくれ。まずポイントは京都の２０００Ｍ内回りだ。４つのコーナーとフラットな直線。 これは単に桜花賞向きのスピードだけでは通用しない。かといってオークスほどのスタミナもいらない。 器用さが要求される微妙なコースだ。春の桜花賞と違いここが最終目標の４歳牝馬はいないが、 次のエリザベスはあの最強牝馬エアグルーブ様が控えているだろう。で、ここはどうしても嫁入り道具 のＧ�Tを是非とも獲っておきたいところだ。そこでズバリ本命は１回叩いて上昇のエアデジャヴーだ。 春の追い込み一辺倒とは違い先行力を身につけ、強く美しく変貌した。４歳牝馬の卒業パーティーには、 笑顔のエアデジャヴーが良く似合うぞ」
「そうなんですか・・・」とエアを本命にしているＴが怪訝そうな表情でいう。
「ではヒモは？」
「相手探しは難しいんだが、やはりここは強い牡馬と戦ってきたマル外か。そこで相手筆頭はエルコン ドルパサーらと戦ってきたスギノキューティーだ。前走はただの叩き台。中間の動きがスムーズになっ てきた今度こそ直線一気の切れ味が爆発するぞ。あと忘れてならないのが３歳時２０００を２連勝した 実力馬ショウナンハピネスだ。ホープフルＳで見せた息の長い末脚が甦ればいい勝負になるぞ」
「甦らないじゃないかなあ」とＴが小声でつぶやく。
「なんか言ったか？」
「いやなにも。師匠の完璧な予想に聞き入ってますよ」
「よろしい。あとファレノプシスについてなんだが、当初は距離不足で軽視していたんだが、 追い切りが良かったからなあ。２番手グループの一角には入れておかなきゃな。でも人気だけに押さえ までだ」
「あのー、オークス馬エリモエクセルはどうします」
「あれは消しよ。ぶっつけ本番で勝とうなんて甘い、甘い。あのべガやエアグルーブさえも消えたぐらい だからな」
「確かに調教も軽そうでしたし、順調にトライアルを勝った２頭に比べるといまいちですね。 あと小回りの多頭数というのも減点ですね」とＴ。
「お前も成長したな。まさに夏を越した４歳馬だな」と師匠。
「ええ。それだけカイバ代もかかった見たいですよ」とＳ。
「うるさいっつーの」
「まあ、まあ。そんなカイバ代くらい俺の予想を信じたらすぐ取り戻せるから安心しろ」
「そうですよね。はい」と心にもない返事をするＴ。
「あと穴候補では」とＦ。
「おう。あとはマーナイドＳで見せた脚がすごかったエガオヲミセテだ。勝ちに行った有力馬の末脚が 鈍ったらじゅうぶん間に合うぞ。まあこんなところだな」
「ありがとうございました。これから始まるＧ�T戦線のタネ銭ができそうですよ」とＳ。
「そうか。まあ、当たったところで使い過ぎは行かんぞ。暮れまで続くんだからな。 大事な奉公も残っているし。寒さに強い体に仕上げておけよな。来年からはＪＲＡカードで 抽選だから運も磨いとかなきゃならんな」と師匠。
「そういえば、来年から指定席はカード抽選でしたね」とＦ。
「こんど入会申込書をもってくるから銀行印用意しておけよ」
「わかってますよ」と弟子一同。
「じゃ俺はこれでな」と夜の街に消える師匠。

（弟子達の会話）
「一番調子のいいエアにはなんともいやな予想だな。よりによって師匠に気に入られるなんて」とＦ。
「おれもファレノも買うと聞いたとき冷やっとしましたけど、エア−ファレノで、当たっても損する パターンっていうのも考えられるから順当に決まる可能性もありますね」とＳ。
「そうですね。だからエアから入ってもファレノ勝負で行けばいいんですね」とＴ。
「おっ、１点か」
「ええ、まあそんなところです。堅いですがエア−ファレノが勝負馬券です。あとはエアから少々薄め にいきます」とＴ。
「確かにエア−ファレノが勝負馬券ならいいか」
「俺としては今回は珍しく１番人気のファレノから入ろうと思ってますよ。師匠がエアを消してくれたん で自信がつきましたよ」とＳ。
「ところでＪＲＡカードのことなんだけど」とＦ。
「あっ、僕もそのことで」とＴ。
「まさかＴ君も同じことを」とＳ
「そうだよな。師匠ってカード作れんのか？」
一同「・・・」

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