同時進行!!ウィークリー馬券物語

第76話: 2001年:天皇賞・春(GT)


「クラシック第ニ弾の皐月賞も断然人気のアグネスタキオンが快勝しましたね」
「今年の3歳牡馬はレベルが高くて見てて面白いね」
「これに順当ならダービーにクロフネが加わるんですからね。毎日杯のタイムは古馬オープン 以上。いくら速い阪神馬場だったといえ翌週の大坂杯から0.数秒遅いだけですよ」
「完調のクロフネに、コース適性のあるジャングルポケット。迎え撃つアグネスタキオン。 こりゃ今から楽しみだなあ」
「その前にこのレースで資金稼ぎだ」と師匠登場。
弟子一同「ゾスッ!」
「おお。皐月賞は俺の言った通りタキオンがまず一冠を獲ったな」
「でも2着が抜けでしたよ」と思う弟子達。「いやー、お見事でした」
「うむ。それでは春天の勝ち馬教えてやるぞ」
一同「お願いします!」
「優勝劣敗の法則、優秀なサラブレッドが勝ち、能力の劣る馬が淘汰される。競馬とは 自分の子孫を残すための戦い。レースとは自らのとしての固体が存在する証。また血統が 重視されるのは、何代にも渡ってその遺伝子が生き残るための意思を引き継いでいるからだ」
「うーん、我々は人間界で良かった」と思う弟子達。
「天皇賞に出走するメンバーはどの馬も強く、ハイレベルなレースとなるのは必然である。 日本の馬がドバイワールドカップで見せた世界に通用する実力、そのトップクラスの頂点に 立つ決定戦。そこの負けられない理由、勝つ宿命を背負った戦士が出揃った」
「師匠の目からも、ハイレベルなメンバーなんですね!」
「ああ、そうだ。そこでだ。 ◎エアシャカールは常に世界を見据えている。昨年の海外遠征、キングジョージでまったく 歯が立たなかった現実、しかし決して諦めない闘志。古馬になりフィジカルが逞しく 成長したがまだまだ成長途上。サンデーの闘争心を武器にステップアップ、世界制覇を狙う馬だ」
「エアシャカが本命っすか!」
「あのう、オペラオーは?」
「20世紀の覇者○テイエムオペラオー、もはや負けは許されない。無敵の8連勝が 色褪せていく、歴代の名馬が只の強い馬に格下げ。天皇賞が汚名挽回のラストチャンス。 実力は申し分なく、引き締まった馬体が研ぎ澄まされ、爆発的な瞬発力がターフに閃光する」
「やはりオペラオーは只者じゃないってことですね」
「おお。次に強い▲ナリタトップロードが復活した。苦闘に満ちた1年6ヶ月、暗闇から白日の光の中 へ開放。勝負のアヤとは不思議なもの、切っ掛けさえ掴めば連勝街道驀進も当たり前。得意の 淀長距離、菊花賞の再現、そして勝負手は他馬を引き離してのロングスパートだ」
「前走はマジで凄かったですね。さすが菊花賞馬と思いましたよ」
「他に何かありますか」
「影の刺客★アドマイヤボス、タイプこそ違えど兄アドマイヤベガに劣らぬ超良血エリート。 レースの度に潜在能力が開花、素質が体に伴うにつれ、一族のイメージに近づいてくる。 ならば今回こそ最大の惑星」
「やはり血はウソをつかないってことっすね」
「あっ、そういえばあの万年2着の強い馬は?」
「あはは、何としてもNo2の地位返上、GTの勲章が欲しい△メイショウドトウ。距離不安も実力は 半端ではなく強い。ここまでが争覇圏。しかし結局、このメンバーで勝つために必要な ものは、極限状態を超えた時のプラスアルファ。ゴール前一完歩、グッドラックだ」
「うーんやはりこの5頭しかありませんか」
「でも師匠の御宣託で軸がわかりました」
「天皇賞は俺の予想通り強い馬が勝つ。わかったな」
「ゾスッ。ありがとうございました」
「じゃあ俺はこれでな」と夜の街に消える師匠。


(弟子達の会話)
「トップロードの復活。連勝の途切れたテイエム。順調なドトウ。前年準3冠馬エアシャカ 、素質開花アドボス、さらにセイウンスカイの参戦など見所いっぱいの天皇賞ですね」
「まずトップロード。前走阪神3千をレコード勝ち。今の阪神は時計が速いけど、8馬身 千切ったのは底力の証明。完全復活だろう。ペースメーカーがいてスローの上がりの競馬 にならなければホントに強いのはこの馬なんだなと改めて実感したよ」
「ええ、昨年は持病や馬場やペースに泣かされましたけど。あ、あと騎手の腕も。 まともに走れば、これぐらい当たり前なんでしょうね。今回はテイエム云々より自分のレース をすれば勝てる気がしますね」
「そこまで言うか」
「ええ、今回大逃げ宣言がユウイチやミッキーから聞かれてますし、セイウンスカイも参戦。 ペースが遅くなるはずがありません。そうなれば問われるのは底力、本当の実力です。 だからトップロードが渡辺さえとちらなければ勝ちます。もうスローで直線ヨーイどんは 見たくありません」
「なるほど。確かにセイウンスカイがでるレースってレベルは高くなるんだよな。この馬の 逃げ・先行するスピード能力がレース全体を引っ張るからね。紛れなく、素直に実力が結果に 現れるだろうね」
「そうですね」
「ところでテイエムですか、どう見ます」
「8連勝の大記録も内容イマイチという評価。本当に歴代の名馬に勝るとも劣らない ためには休み明けにもきっちり結果を出すべきだった。それが4着とは。敗因は 温泉明けと高速競馬とかいろいろ言われたけど、休み明けのアドボスに競り負けたのは 頂けない。ほんとに強い馬なら格好はつけるはずだよ。はっきり言って調子落ちだろうな。 あと大阪杯を選んだのも結果的に良くなかった。立て直すに時間が短いよ」
「うーん、そうですね。おなじようなコメントをグリーンチャンネルで 境勝元調教師が言ってましたね。重賞何連勝もする馬が理由はどうあれ 負けたりしないって。それも連を外したりしてですよ。調子落ち以外になにか あるんじゃないかって」
「なるほどね。さらに今回は前で速くやりあう展開だろ。凄いサバイバル戦になりそうだよ。 スタミナ勝負はオペラオーも得意だろうけど、トップロードは前に行ってスピードがあるし、 同じような位置でドトウ、後ろにエアシャカといままでのような楽な競馬は出来ない。 でも今までのデータをことごとく破った底力 や内容はイマイチでも重賞8連勝はダテじゃない。実績を信じて重い印はつけるべきだろ」
「そりゃそうですね。前年の春天の勝ち馬は翌年も好走してますからね。やはり無印はいかんですな」
「次にドトウはどうだい」
「血統的には明らかに長いんですが、2400以上のGTで差のない2着ですから、 距離に不安はないと思います。マル外ですし、あまり過去のデータが当てはまらない でしょうし、そもそも3千以上の適鞍がなかったんで使わなかっただけといえるんじゃ ないでしょうか」
「そうだろうな。今までの実績を考えたら距離云々もないだろ。あとは力関係。今回は 宿敵テイエム以外にもメンバーが揃ったからな」
「次にエアシャカはどうですかね」
「昨年の旧4歳牡馬勢のレベルは?がつくけど、前走20キロ以上の馬体増で 高速決着の2着は師匠の仰る通り成長の証。前年の菊花賞馬。一番成長性に 富む明け4歳だから期待は大きいよ。ここで勝ったら一気に世代交代だろう」
「そうそう、後ろにはタキオンとかクロフネとかいるんですから。 ここらで実績残さないと、ひとっ飛びに世代が飛んじゃいますよ。競馬界のためにも 頑張ってもらわないと。有力馬の中では騎手が一番上なのが心強いですね。豊の2冠馬に 乗って無様なレースできんでしょう」
「そうだな。蛯名は春天で幻のガッツポーズがあったからな。今度こそ雪辱のチャンスだと 思ってるだろうね。あと、この馬にもペースは向くんじゃないかな。 菊花賞馬だからな、スタミナ勝負は持ってこいだよ」
「あと、アドボスはどうです。超良血で素質は高いと思いますけど、イマイチ春天という イメージがないんですよ。長距離戦の実績がない上、前走は2千の大阪杯。距離を試すためにも 阪神大賞典を使うべきだったと思うんですよ。オープンやGU程度ならそうでもいいですけど、 古馬ナンバー1を決定する春天を獲ろうと思うならそうすべきですよ。 昨年のラスカルスズカなんか春天を獲るために順序だてたローテ・作戦を組んでましたよね。 アドボス陣営のはその必死さが足りないように見えます。血統におんぶに抱っこじゃGTは勝て ませんよ」
「厳しい見方だね。俺も引っかかるのは母方のトニービンの血。トニービン自身は長距離タイプ だったけど産駒はマイラーが多いんだよね。エアダブリンなんか長距離走ったけど、母方がスタミナ 血統だったからね。で、春天は一番人気で沈んでいたな。アドボスには、ずばり距離のカベがある と見るね。JCとか有馬みたな距離が合うんじゃないの」
「ところで帰ってきた2冠馬・セイウンスカイはどうです」
「常識的には難しいだろうね。でもセイウンスカイのおかげでレースが澱みのないペースに なるのはいいね。スローの上がりの競馬はやめてくれって感じだったからね、去年は。 ホント、昨年セイウンスカイがいたらテイエムの8連勝はなかったろうな」
「でしょうね。今年はさらにタガジョーノーブルやサンエムエックスが飛ばすようですからね。 もの凄いレベルになると期待してます。まさにサバイバル戦」
「いやあ、面白い一戦になりそうですね」
「ところで話しは変わるが、我々一門のHさんが競馬雑誌に紹介されたらしい」
「えっ、どんなことですねかね」
「なんか返し馬診断で優秀なファンがいるってな内容だったな」
「そりゃ凄いっすね。師匠が知ったら、奴も俺の領域にまた一歩近づいてきたな、なんて 言うんでしょうね」
「あはは、さらに領域から遠ざかったってことなんだけどね」
「えっ、領域なんてあったんですか?」
「あるぞ、有馬の指定席ゲットのノウハウや新潟や福島の旅館とりなどな」
「それって馬券に関係ないことじゃないですか・・・」



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