同時進行!!ウィークリー馬券物語

第72話: 有馬記念:当日・結果編(GT)

FとSがお昼前にやって来て一門が集結。
「お前ら重役出勤とは偉くなったもんだな」と師匠。
「いやあ、そんなことないっすよ。朝イチからやったら我々のような 未熟者は損ばかりこいて有馬まで持ちませんから」
「まあ、お前らの実力ならそれも仕方ないな」
「まったくおっしゃる通りです」
「あれ、昼休みなのに下はまったく動きがありませんね」
「ああ、グラスワンダーの引退式があるんだ」
「グランプリの日にグランプリ3連勝のグラスの引退式なんて JRAも心憎い演出ですね」
そして、グラスワンダー号の登場。傷は癒えたものの人を乗らすことは出来ず 厩務員に連れられダグで本馬場へ。オーナー、尾形調教師、的場ジョッキーその他 関係者を囲んで記念撮影しセレモニー終了。
「師匠、午前の出来はどうだったんですか」
「ウィー、俺がやられてるわけないだろ、ははは」と完全に出来上がっちゃてる師匠。
「な、わけないよな」と思う弟子達。
「よっしゃー。5Rはこれからや!」と気合を入れたものの、いきなり万券の洗礼。
「おいおい、1、3着だよ」
「きてりゃ、40倍はついてたのに」
「惜しいなあ」
意外にいい線ついてた一門。でも誰も当たっていない・・・。
「まあ、これは仕方ない。次は軸がいるからもらったっもんよ」
そして6レース。人気のネオポリスが直線豪快な末脚で先頭ゴール。しかし、人気薄 タヤスユキヒメが2着の前残りでまたまた万馬券。
「ネオポリスは実力通り走れば勝つのはわかっていたんですが・・・」
「他の人気どころは何しとるんだ!」
「くっそー」
悔しがる一門。午後に入って荒れ気味の中山。このまま一門撃沈か?
「よし、こうなったら師匠の助けを借りよう」
「次は3歳のオープンですが、どれが勝つでしょうか」
「スイートゥンビターだ」
「1勝馬ですが1番人気ですね」
「このレースは堅いですか」
「堅い」
「じゃあこれから人気どころに絞って当てにいきます」
と席に戻る弟子達。
「おいおい、スイートゥンビターだって。シルヴァーホーク産駆のマル外、さっきのグラス の父と同じ。素質も高そうですし師匠の本命でも勝てそうです」
「しかし、ここは何が起こるか3歳戦。ロードの2頭だし。岡部か善臣か。ここはリーディングの かかる岡部から行きます」
そしてレーススタート。いきなり置いていかれる岡部・ロードプリズム。
レースは淡々と進み直線もう一頭のロードが先頭に立つも 1番人気スイートゥンビターが差しきり快勝。
「げっ、もう一頭のロードがきちゃった。トホホ」
「さすが師匠、スイートゥンビターきましたね」
しかし、師匠の顔色が冴えない。
「まさか、ロードフォレスター抜けですか?」
「えーい、うるさい!」
やはり抜けであった・・・
しかし、
「ヒヒヒ、俺は複勝で万つっこんだの来ちゃったよ」と一人微笑む弟子もいた・・・。
次は有馬の前は8Rフェアウエルステークス。
ここは軽くして有馬に備える者やパドックの場所獲りに向かう者などでレースに集中してない。
「ここはほどほどにしてもうパドック行こう」
「ええ」
そしてパドックへ。まだ馬は周回してないが、8Rの実況が聞こえる。
『さあ、 ヒダカクラフティーかシルクディヴァインか』
「あれ、シルク?」
「おお、シルク来たのか。俺はこのレース買ってないからいいや」
「あのー、私抜けなんですが」
「お前、シルクの会員なのに買ってないのか、裏切り者」
「だって駄馬しか売らないんですもん」
「それは我々が安い馬ばかり買うからだ」
「トホホ」
「おお、出て来たぞ」
「テイエムはと。いました」
「4キロ増か。ドトウは8キロ増。ちょっと増えすぎか」
「まあ、冬ですから体重が増えるのは仕方ないですよ。激戦続きだから減るよりは いいんじゃないですか」
「そうだな。さすがグランプリ、どれも仕上がりは良さそうだな」
「師匠、やはりテイエムですか」
「当然だ」
「僕はダイワから夢を買います」
「それは俺も押さえておこうと思っている。中山巧者に蝦名だからな」と師匠。
内心「えっ」と思う弟子達。「こりゃワイドで押さえておこう」
「あのう、やはりドトウは消しですか、師匠」
「来ない」
「わかりました」
その時「ドトウ仕上がりいいじゃん」と思う弟子がいた・・・

そしてレーススタート。
なんと、ホットシークレットの出が良くなく後方から。先頭はジョービッグバン、ゴーイングスズカで 「こりゃあスローペースだ」。
「バカヤロー、横典」「なんで逃げねえんだよ」と観衆から怒号がひしめく。
「これじゃハイペースの流れ込みは不可能じゃん。スティは消えちゃったよ」
「あれ、テイエムはあんな後ろですよ」
スタート後のごちゃつきで不利を受け後方待機のテイエム。さらに豊・アドマイヤボスが外をぴったりマーク し出るに出れない。
「おいおい、豊やる気だよ」
「おお、テイエムを押し込んでいるよ」
危うしテイエム。
レースはスローで淡々と進む。ほぼ一団になって最終コーナーへ。熾烈になった前争い。しかしテイエムは 依然馬群の後方。先頭集団では的場・ナリタトップロードいい感じで上がってきた。歓声がひときわ大きくなる。
「行け、ナリタ!」「的場ー!」という絶叫と「どうしたテイエム」という悲鳴が交錯。
そこへナリタの外にいた8歳馬の老雄・ダイワテキサスが徐々に進出しなんと先頭へ。
「あれ、ダイワだよ」「ダイワー、そのまま」
そこへ後方からメイショウドトウがやって来た。
「来たぞドトウ!」「差せ、ドトウ!」
テイエムに雪辱かと思われた瞬間、馬群を縫うように現れた栗毛の馬体、それはやはり
テイエムオペラオー だ!!!
なんと直線後方から、それも中をついてテイエムが先頭のドトウに襲いかかる。
踏ん張るドトウ、しかしテイエムの勢いが上か。交わしたか?と思ったところでゴール!
「おいおい、どっちだよ」
「うーん、テイエム有利ですが、ここからでははっきりとはわかりませんね」
「3着はダイワだ!!ワイドで獲れたぞ」喜ぶ弟子も。
「ゴールシーンもう一回見ないとわかんなよ」
「あっ、今流してます」
ターフビジョンにゴールシーンがスローでリプレイされる。食い入るように見つめる数万の観衆。
ゴール数メートル前から2頭の叩き合いがスローで映し出される。
さあ、ゴールの瞬間、一瞬止まる映像。先着したのは、
テイエムオペラーだ!
史上初、古馬中長距離GT完全制覇の偉業達成に沸く競馬場。
「有馬まで勝っちまった」
「凄い、年内全勝だよ」
「それもGT5勝もしてだよ」
「うーん、それにしても2着はまたドトウか」
「なんか可哀相ですね」
「ところで師匠は」
「テイエムは勝ったから獲れてるはずだが。あっ、ドトウ抜けじゃねえか」
後ろを振り向き師匠を見た弟子達。
そこには青ざめた師匠が・・・
「うー、ぐー、や、ら、れ、た・・・」
一方、馬券を当てた弟子達は、
「おお、テイエムで17倍、ドトウで29倍もワイドついてるよ。ラッキー」
「やはりこの2頭か。ドトウは返し馬よかったんだけど、テイエムが来ちゃったか。 まあ、ガチガチでも当たったからいいか」
「さあ、有馬は終わった。阪神の最終レースカウントダウンステークスの検討始めなきゃ」と 師匠にかまわず馬券検討に入る弟子達。
馬場では表彰式が進行中。
和田騎手「みなさんお手を拝借。 1、 2、 3 ダッー」
「おいおい、あいつは猪木か」
「まあまあ、これだけGT勝ちゃあ笑いも止まりませんよ」
「えーと、それより阪神マイルはマルカコマチだな」
「1枠1番でもどうせ後ろから行くんだから関係なしだな。取りこぼしても2着は堅い」
「まあ、儲けは少ないけど有馬を当てたんですからここは軽くしておきましょう」
「まあそうだな」
そしてレーススタート直前、中山競馬場では鈴木淑子、井崎脩五郎、原良馬が馬場内でカウント 開始「5,4,3,2,1スタート!」
レースは直線、外から後方一気のマルカコマチをハナ差押さえてトッププロテクターが勝ち、 順当な結果に。
「あーあ、1点だったんで外しちゃった」
「僕は押さえてました。でもこれじゃ安いですね」
「まあ、有馬当てて締めくくれた分いいか。ところで師匠」と後ろを振り向くが師匠はいない。
「あれ、師匠どこ行ったんだ」
「あのー、何も言わず帰ってしまいまたよ」と師匠の後ろに座っていたKが言う。
「おいおい、今日は納会じゃなかったんか」
「そーすっよ。俺達に一言も言わず逃亡か」
「せっかく師匠にも奢ってあっげようと思ったのに」
いっせいに振り向く弟子達「お前、それは嘘だろ」
「あ、やっぱりバレました。奢るほど儲かってないです」
「まったく。あれ、こんなメモ書きがあるぞ」
「読んでみて」
「ええ。『俺は今日私用で帰る。決してやられて帰る訳ではない』」
「なに言ってるんだよ。どうせ負けたくせに」
「まだ続きがあります『今年はお前らに楽をさせすぎた。 朝並ばないために太目残り、追い切りが2本も足らなかったよう なもんだ。でも許してやろう』」
「許すもなにも何もないでしょうが」
「続きです『そのかわり新税はちゃんと収めて貰うぞ。今日は勘弁してやる。 金杯の日まで待ってやるから、ありがたく思え。それでは新年からまた競馬を教えてやる な、正月だからって無駄遣いするなよー師匠より』ですって」
唖然とする弟子達。一門の苦悩は来年も続く・・・。

追伸:樹海でリフレッシュ!!



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この物語は、本当のことも書かれておりますが、基本的に フィクションです。実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません。また関係者?以外 の方が読んでも内容がよく分からないと思います。御質問があればメールをお送り下さい。答えら れる範囲でお答えしたいと思います。