同時進行!!ウィークリー馬券物語

第71話: 有馬記念(GT)


「いやー、懐はいつも寒いっすけど、今年の冬は元気がありますよ」
「なんたってこのクソ寒いなか朝早くから並ばずに済んだんだからな」
「おまけにハガキがこんな当たるなんて思いもよりませんでしたよ」
「一門8名が観戦できるだもんな」
「ところで一門って関東に8人もいましたっけ?」
「うーん、それは俺も思った。しかし名簿順位が俺とお前で7、8位だったんぞ」
「な、なんと。今までの御奉公はなんだったんでしょうか」
「カード抽選でゴンドラを当てれば繰り上がりだってさ」
「ゴンドラって10倍以上の倍率だったんですよ。親父にも頼んで一口抽選入れ てもらったのにハズレましたよ。それに当たったら師匠には内緒で見に行きますよ」
「俺には内緒ってなんだ?」とそこへ師匠登場。
弟子一同「ゾス!」
「おお」
「いやー、内緒でクリスマスプレゼンでもしようかと言ってたんですよ」
「現金ならいつでも歓迎だ」
「え、それは勘弁して下さい」
「ところで今年のフィナーレ有馬記念の勝ち馬を教えて下さい」
「ははは、俺に任せろ!」
「ゾス!」
「20世紀最後のGTということで、ファン注目のレース。少しずつではあるが、サークル内には 活気が戻ってきた感じだ。さすがは有馬記念。それにましてもテイエムオペラオーの強さは際立って いる。今年無敗の7連勝、向かうところ敵なしのライジングサン」
「やはりガチガチの本命ですか」
「まあ、まあ先を急ぐな」
「はい」
「この有馬記念を勝てば、天皇賞、ジャパンカップに続き秋のGTを3連勝で特別ボーナス 獲得。歴代の名馬に肩をならべるどころか、一歩抜きん出た存在となる。世紀末のヒーローが ファンを引き付ける。JRAのシナリオは正しくこれ、売上げ回復の起死回生策」
「なるほど」と頷く弟子達。
「しかし昨年のスペシャルウィークを例にとるまでもなく、楽観は禁物、競馬場には魔物が 潜んでいる。ライバル達もそう簡単にはギブアップせず、玉砕覚悟で挑んでくるぞ。最大のウィーク ポイントは鞍上、若い和田に対しベテランジョッキーがどう撹乱するかだ」
「テイエム危うしですか」
「いや、それでも現段階ではJRAのシナリオに乗ってみようか。馬の方はまったく問題なし、荒れ気味の 現馬場状態も得意、実力が違う◎テイエムオペラオー本命で仕方ない。ただし相手は少し捻らなけれ ばならない。真っ向から打倒テイエムを挑めば、返り討ちとなる」
「本命はテイエムっすか!」
「すごい!古馬中長距離GT完全制覇だ」
「で、相手はどれでしょうか?」
「実力的にメイショウドトウ、マチカネキンノホシ等が争覇圏だが、その内側で虎視眈々○スティゴールド が隙を窺っている。狙いは後半ハイペースのなだれ込み勝負。ジャパンCは逃げて沈没、殆どノーマーク の今回元祖シルバーコレクターの実力が黙っていない」
「うー、渋いスティゴールドっすか」
「あのヤネの替ったあの馬は?」
「弱気のコメントばかりで泣きが入っている▲ナリタトップロードも侮れない。人気が落ちてもGT馬、 やっと騎手交代、鞍上が的場ならば一発があってもおかしくなない。また最強世代6歳牡馬代表、旧3強 の★キングヘイロー。腐っても鯛、斬れる末脚は恐ろしく爆弾印」
「あの世代は強かったですよね」
「あとは、なんでしょうか」
「そして天才武豊が御す△アドマイヤボス、素質だけなら底知れない未知の魅力がある。未だ成長途上だが、 天皇賞のリベンジ。少なくともテイエムを内に封じ込め抵抗ぐらいは見せてくれよう」
「JCでは馬の力が違いすぎてマクレなかったですからね。やはり天才が黙ってないですよね」
「テイエムの優勝で20世紀を締めくくるわけですね」
「ああ。しかしお前らにはもうひとつ締めるものがある」
「えっ、なんですか」
「今年は俺の行いが良かったからお前らも、冬の寒い中並ばないで済んだんだぞ。おまけに ゴンドラのカード抽選を外しやがって」
「いや、それは、その。我々は師匠に非常に感謝しております」
「その感謝を形にするために新税を導入する」
「新税?ここは横浜か?」と思う弟子達。
「馬券購入100円につき5%を俺に収める。さらに当たった場合、利益の30%を収めるのだ。 これは日曜のレースから導入だ。しっかり当てて俺に収めろよな。あっはっは。じゃあ俺はこれでな」と 立ち去る師匠。


(弟子達の会話)
「おいおい、新税ってなんだこりゃ」
「横浜市のマネですな」
「ただでさえ25%引かれてんのに、これ以上取るは言語道断だ」
「そういえばあの市長『地方のことも考えてください』って言ってましたけど、 こっちだって言ってやりたい『競馬ファンのことも考えてください』って」
「そうだよ。そもそも『市民のためになってない』なんて言うなら誘致しなきゃ よかったろ。撤収させればいいじゃないか」
「それに税の公平性を考えるなら、一部の者に負担を強いるのはおかしい。横浜市の財政が逼迫なら 横浜市内で消費税のような間接税を導入してひろく市民に負担させるべきですよ」
「とりやすところから取るという発想が安直。風俗産業やパチンコ業界からも取ろうと考えていたん だけど、風俗業からとったら市がヘルスなんか認めてしまうことになるんでボツ。パチンコは業界の 猛反対でボツになったらしい。そこでJRAがターゲットになっちまったということです」
「ファンとしては横浜の場外で買わないことにするのがささやかな抵抗か」
「いっそ横浜の場外なんか撤退すればいいんですよ。そしたら彼らも自分の失政に気づくでしょうね」
「ところで有馬はやはりテイエムか」
「しょうがないですね」
「この馬が凄く強いというよりまわりが弱いんだろうな」
「昨年は、エルコンドルパサーは海外でいなかったですけど、最強世代の5歳馬は スペシャルウィーク、セイウンスカイ、 グラスワンダーと強い馬がいましたからね。比較がしやすいですよ。春天で先行するセイウンを競り 負かし、ブライトの追撃を振り切ったスペシャルはホント強かったですし、そのスペシャルを グランプリ2戦とも負かしたグラスも強かった。両グランプリとも 目標のGT激戦後でスペシャルが不利な部分も ありますが、きっちりこういうところで負かす馬の存在ってのも大きいですよ」
「今年の場合、その隙さえつけないライバル陣が不甲斐ない。というかそういう馬がいない。 そのためテイエムの評価って勝利数だけなんだよね。歴史的な偉業も達成し実績も スペシャル、グラスを超えているのに誰もそれらより強いとは思ってはいない」
「まあ、これはテイエム自身には罪はないですよ。ライバルがいない分きっちり すべてのレースを勝つ。これもまた凄いことです」
「ところで死角はあるかな。やはり激戦の疲れか」
「そりゃあ疲れてはいるでしょうけど、他馬も似にたようなもんでしょ。 同じようなローテの馬ばかりで、秋1戦や休み明けの実績馬がいない」
「そうだよな。勝負付けの済んだ馬ばかりだし。テイエムの死角を探せば探すほど 他馬の死角が目につくだけ」
「テイエムを消すには故障や不利のアクシデントや不可解な凡走とかに 賭けるしかない。でも、こういう賭け方するなら積極的に買える馬がいる レースをやったほうがいいですよ」
「じゃあワイドか」
「先日朝日杯に日のグリーンチャンネルでラフィアンの岡田氏がゲストで出演されてましたけど、 ダイワテキサスを推奨してましたよ。テイエムに勝つことは絶対ないでしょうが」
「ほお」
「JCで距離が持ったのは大きいですし、キンノホシ、スティに先着。ましてや4歳馬があれですからね。 それに府中より中山の方が向いてますし、一瞬の切れ味ならこのメンバーでも 引けはとりません。2、3着ならまんざらないとは言えませんよ」
「うーん、ナリタは今の中山の馬場に向かないのは確かで人気ほど信頼性はない。 テイエムが別次元の馬とすればメンバー中一番疲れが溜まっているの2着続きの メイショウドトウだろうな。 未知の魅力の4歳馬もGT勢がJCでメロメロで底が割れている。で、キンノホシが好走ならダイワもって ことになるわけか」
「そういえば、忘れて成らないキングヘイローは」
「近走不振ですが、GT馬です。大駆けしても文句は言えません」
「まあ、引退レースだし、買うか買わないかは好きにすればいいか」
「ツルマルツヨシはどうですかね」
「有馬っていかに体力を温存しているかがポイントになるのは確か。長期休養明けで秋1戦、おつりは いっぱいあるけど馬の強さはどうかな。ヤネが藤田だし、まったく無視も怖いよ」
「そうですね」
「ところで終わったら一門の納会はあるのかな」
「それは師匠の勝ちにかかってます」
「それでは納会ではない、反省会だ」
「また、あれですか。どうせ当たらないんだから反省しても無駄でしょう」
「ウマの耳に念仏ってか」
「そう言うと師匠の場合、そのウマはホワイトストーンだ、名馬だろって言うんでしょうね」
「うーん、師匠が応援しなければ名馬になれたのに」
「来年も名馬の芽を摘んでしまんでしょうか、師匠は」
「じゃあ、我々も師匠のもとを離れれば名馬のようになれるんでしょうか」
「おお、そうだ、そうだ」
「そうしましょう」
「よしこれで勝てるぞ」
お目出たい弟子達であった。



(作成12/23)

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この物語は、本当のことも書かれておりますが、基本的に フィクションです。実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません。また関係者?以外 の方が読んでも内容がよく分からないと思います。御質問があればメールをお送り下さい。答えら れる範囲でお答えしたいと思います。