正直という戦略



 糸井重里と同じような時期にホームページを作ったので、初期のころは応援していた。その後ちょっとがっかりするものに変わってしまったような気がする。かと思っていたら、すごい書き手が出てきた。

 その名も山田ズーニー。ズーニーとは、北インドのカシミール語で「月のように」という意味だそうだ。その山田さんが書いた『伝わる・揺さぶる!文章を書く』は、人を動かすための文章の書き方を説いている。まるでD.カーネギーみたい。

 だからしゃれたエッセイを書きたい人や、エンターテイメント系のコラムを書きたい人にはおすすめできない。しかし読み手に気持ちを伝えたい人には、なかなか役に立つ本である。実例も、上司を説得する、お願いの文章を書く、議事録、志望理由の要件、メールなど実用に徹している。

 でもそれはこの本の一面でしかない。もう一つの顔は、考える方法を具体的に示していること。自分がいいたいことは何なのか、何のために書くのか、論点の決め方などのノウハウを実践することは、自分を発見することでもある。

 そして彼女が一番いいたいことは、とても明解。自分にしか書けない、かけがえのないものを、その想いに忠実に書こうじゃないか。
(2002-10-05)
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