テレビの中の人生



 テレビでは、ドキュメンタリーをよく見る。その中には伝記的な番組も多い。そんな中からいくつかを拾ってみよう。

 まずは清川虹子。戦前からの芸能史にもからめて、美空ひばり、江利チエミなどとの関係も紹介されていた。しかし、意図的に欠落させているものがある。本人が隠していないのだから、番組でも普通に扱えばいいものを。楽しい番組ではあったが、過剰なよいしょの姿勢にはいささか閉口した。

 「テキヤぶるーす」は、テキヤのおばあちゃん一家のものがたり。息子の嫁さんとの激烈なけんかを写したホームビデオはすさまじかった。商売仲間と骨休めに出かけては、嫁の悪口を言って憂さを晴らしていたおばあちゃんが、ついに自分を変える日がやってくる。

 これまで病気一つしたことのなかったおばあちゃんが、体調を崩し入院する。そんなときに今まで絶対に仕事を手伝わずに、年末のかきいれどきになると実家に帰っていた嫁さんが、テキヤの仕事を手伝うと言ってくれたのだ。仕事の準備を手取り足取り教えた後、手持ちぶさたになったおばあちゃんのちょっとさみしそうな後ろ姿が印象に残った。2年3ヶ月にもわたり記録したこの作品、今年の秀作の一つにあげたい。

 作詞家なかにし礼の番組では、石原裕次郎との出会いや実兄との相克を紹介していた。驚いたことにどの曲も良く知っているものばかり。北原ミレイが歌う「石狩挽歌」が、自伝的な曲だとは知らなかった。総じて演歌は聞かない私だけど、この曲はライブで聞いたことがある。

(1999-04-26)
  • テレビ・ドキュメンタリーの現場から 渡辺みどり 講談社 2000 講談社現代新書1491 NDC699.6 \660+tax
     CM、視聴率などのテレビ業界の基礎知識から、ドキュメンタリー番組の作り方まで概説している。テレビの入門書として、テレビ雑誌などの情報を補ってくれる。
(2000-04-28)