自浄力のあるアメリカ



 「ホワイトハウス」というドラマを、つくづくアメリカってすごい国だな、と感心して見ていた。これまでにアメリカ映画をたくさん見てきたが、やはりよくわからない国である。

 霍見芳浩『アメリカのゆくえ、日本のゆくえ』は、そんなアメリカ・オンチの治療によさそうだ。

 霍見(つるみ)は、司馬遼太郎と対談したことがある。そして司馬さんの『アメリカ素描』をふまえて本書を書いた。アメリカの多様性を知るには、手ごろな入門書である。

 現在ニューヨーク市立大学で教えているので、とくにニューヨークについては詳しい。ハーバード、コロンビア、カリフォルニアの各大学で教えた経験を踏まえて、東部、中西部、南部、西部の各地を紹介しつつ、アメリカの歴史についても解説してくれる。

 なかでも大統領の格付けがおもしろい。A+には、ワシントン、リンカーン、F.ルーズベルトの3人。その下にABCDのランクがあり、今の大統領はせいぜいCだという。ちなみにクリントンはBとのこと。かつてハーバード経営大学院でブッシュを教えたときの印象は、「軽薄な道化師で、国際感覚が薄い」だったという。それでも大統領が勤まるということは、アメリカの政治システムがいかに優れているかを示している。

 アメリカに住みながらも日本を愛してるがゆえに、日本人に対して厳しい批判を投げかけてくる。

日本人の精神構造は、司馬さんが言う「擬似中世人」心理と徳川鎖国時代に仕上がった籠城心理と他人排斥のムラ社会の心理だといってよい。(p205)
 そして司馬さんが描いた明治の先達から受け継ぐべきものとして、「自分に厳しく、相手にはやさしくする自己」をあげている。せめてエリートと呼ばれる人には、そんな自己を確立してもらいたい。ないものねだりのようだけど。

(2004-05-31)
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