21世紀型のゴミ処理場がほしい



 ある日テレビをつけると、日の出のゴミ処理場のニュースをやっていた。なにやらもめている。聞いてみれば、反対運動がこじれたらしい。思わず田島さんの姿を探してしまった。

 活字で田島さんを知ったのは、ずいぶん昔のことである。田舎に住んで絵なんか描いてうらやましいな、というのが第一印象だった。ゴミ処分場を作る前に、消えゆく予定の森へ散歩にいったりして、とくにもめているとは書いてなかった。

 『日の出の森をたすけて』には、その後のすったもんだについて書かれている。田島さんは反対運動に打ち込んだので、絵を描けなくなってしまった。おまけにガンになり入院までしている。彼はゴミ処分場のほこりが原因ではないかと疑っている。

 この本はあちこちで書かれた文章を集めたので、なぜこれほど反対運動にのめりこんでしまったのか、これまでの経緯、なぜお役人がこれほどかたくななのか、などよく分からないこともある。また扉絵には田島さんの絵が9枚使われているので、それをながめるのも楽しいかも。

 ゴミは、自分の家の庭先に捨てられてみてはじめて実感できる。とりあえず処分場の建設をいったん止め、あわせてゴミの収集も一時中止してみたらどうだろう。ゴミにうもれれば、日の出の人たちの気持ちに気づくはずだ。ゴミの中から都民どうしの対話が生まれるに違いない。
  • 日の出の森をたすけて 子どもの未来を奪うゴミ処分場 田島征三 法蔵館 2000 NDC914.6 \1600+tax
(2001-01-19)