木を切るバカ、切らぬバカ



 田中淳夫『日本の森はなぜ危機なのか』は、目からウロコの1冊である。

 著者は、ある政党の森林・林業ネットワーク・グループに招かれて林業政策を提案した。内容は、
1.環境や森林の公益的機能などを持ち出さない。
2.下刈りなしや無間伐など低コスト林業をめざせ。
3.森づくりよりも商品づくりが大切。
 つまり「環境を持ち出すことを否定し、無間伐で済ませ、植林や育林に力を注ぐよりも売れる商品開発をしろ、と経済優先の林業を提案した」(p192)わけだ。

 それを聞いた議員さんたちにとって、意外な提案だったようだ。この結論だけを聞いたら、反対したくなる人もいるだろう。そういう方にこそ、ぜひ読んでほしい本だ。

 じつは木を切って売るという商売は、もともと儲かる仕事ではなかったこと。林業の不振は、外材のせいではないこと。吉野が林業で成功した秘密。森林ボランティアでは、森を救えないこと。そんな盲点ともいえるようなことがらを、ときにはデータを示しつつ説明してくれる。

 日本の森は決して死んではいない。まだまだ再生が可能である。木を適切に使っていくことが日本の森を豊かにしてくれる。本書を読んで、そのことに自信をもてた。
(2005-08-13)