だんご一皿おいくら?



 経済ってなんだろう、と不思議に思っている人にうってつけの本を見つけた。それは竹中平蔵が、『だんご3兄弟』の佐藤雅彦にレクチャーした本、『経済ってそういうことだったのか会議』である。

 竹中はテレビでおなじみの経済学者である。私の知らない話をよく知っているので、穴ぼこだらけの知識を補うのにちょうどよい。しかも常識人なので、意外性はないが安心して話が聞ける。
佐藤さん、エコノミクスって、ギリシャ語のオイコノミコスから来ているんです。オイコノミコスとはどういう意味かといいますと、共同体のあり方、という意味なんです。
 という竹中の言葉に感動した佐藤の呼びかけで、この本は誕生した。内容は、貨幣と信用、株と税金、アメリカ経済とアジア経済、円・ドル・ユーロ、投資と消費、起業とビジネス、労働と失業である。

 佐藤は、今の時代を次のようにとらえる。
今の世の中を何かにたとえると「ブレーキのないジェットコースター」という言葉があてはまるような気がするんです。みんな頭の隅では、このまま加速しつづけると大変なことになるぞと感じていながら誰もブレーキをかけられない状態。
 電通の売れっ子クリエーターだった彼には、音楽業界がもどかしく感じられるようだ。
 優れたアーティストが、そうでないアーティストを駆逐してレコードやCDの売り上げを伸ばしていく。そういう競争はいいと思うんですよ。
 ところが、たとえば今の日本の音楽業界を見ていると、プロデューサーは売れっ子の誰それ、作詞作曲は誰で、歌は今一番人気のある誰誰に歌わせて、それを新しいテレビのドラマの主題歌にして...っていう具合に、記号的にこうやってこうやってこうやれば競争に勝ち抜けるっていう形とか計算がある場合が多いんです。音楽性とか関係なくて。
 そこには音楽が一番必要な「個人的な感動」というものがなくて、まずビジネス、まず競争ありきで、一言でいえば、正しくない人が勝っているという状況、逆にいうと、正しくやると負ける状況だと思うんですね。
 でも、それはCDを買う人がいるから成り立つわけだ。ということは、メディアによってコントロールされている人が多いということでもある。

 竹中の意見も聞いてみよう。
(GATTでは)世界の貿易システムをどうするかという提案が、アメリカからは100も200も出されているんです。ヨーロッパからも50ぐらいは出されている。ところが、ある専門家の指摘によると、日本から出た提案はゼロなんです。日本はそのとき何をやってたかというと、各国から出てきた提案を国に持ち帰って「どうしようか」と相談ばかりしてたんですね。(中略)
 アメリカは学者が政府の中に入ってますから、そういうものが出てくるんですね。日本はそうなっていなくて、役人が利害の調整を行うという仕組みになってるんです。実は、佐藤さんのようなイノベーターは、日本の政府にはいないんです。
 結果として、政治なんですよね。政治が本当に国民のものになるような仕組みが、私はどうしても必要だと思うんです。
 というぐあいに話は進んでいく。やさしく語ろうとして、やや突っ込みの足りないところもある。でも、できそこないの経済学の本を読んで消化不良を起こすより、この本を読むほうがよっぽどましである。
(2001-04-06)
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