本の中のトークバトル



 私は、すぱっと切れ味のいい悪口を聞くのが好きである。とくにそれが文章の場合は。でもあまりアグレッシブな人とはつきあいたくない。

 辛淑玉という女性を初めてテレビで見たのはいつのことだろうか。その攻撃的なしゃべり方を聞いていて、あまりよい印象を持たなかったことを覚えている。

 その辛さんが永六輔と対談している。『日本人対朝鮮人』では、自分のことを「精神的な性は女、肉体的な性は女、社会的な性は男」と表現する辛さんが、口から生まれたような永六輔を圧倒してしゃべりまくる。
日本というのは、テーブルにつく前に物事が決まっていく。これは国対政治にしてもそうだし、企業における会議の仕方にしてもそうです。韓国の会議では、テーブルを叩いて声を張り上げて議論する、そうやって物事を決めていく社会なんです。つまり論争をしないとダメなんですよ。
そんな彼女が永六輔を評して、
私はやっぱり、きっちりと言葉にして伝えていける力のある人というのはかっこいいと思うし、素敵だし、憧れるんですよ。それがきっちりと具現化された標本サンプルみたいな人が永さんじゃないか、と私は思うわけです。
 永さんは韓国に行って、食事と色彩感覚と結婚式の3つにカルチャーショックを受けたという。在日の辛さんの目から見ても、日本と韓国の差は大きいようだ。

 浅草、御徒町、麻布、青山墓地を歩いてきた二人が、最後に新宿にくりだす。カメラマンのペーさんの案内で語られる街のようすがとてもおもしろい。外国人を排除しない国際都市新宿は、まるで韓国の居留地のようだ。

 この本程度では満足できない女性は、『不愉快な男たち!』を読むといい。とくに50代と20代の男がぼろくそにけなされている。でも私からみれば、このけなしかたもステレオタイプだと思うのだが。
  • 日本人対朝鮮人 決裂か、和解か? 永六輔、辛淑玉(しん・すご) 光文社 1999 NDC319.1 \1200+tax

  • 不愉快な男たち! 私がアタマにきた68のホントの話 辛淑玉 講談社 1998 NDC367 \1500+tax
(2000-10-27)
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