日本人はランキングがお好き



 テレビの街頭アンケートから「サラリーマンの理想の妻:女優編」を見てみよう。(年齢は放送時のもの)
1竹下景子45歳
2八千草薫68
3吉永小百合54
4山口百恵40
5黒木瞳38
6五十嵐淳子46
7東ちづる39
 この順位はいったい何なんだろう。きっとじいさんばかりに聞いたのじゃなかろうか。しかも藤原紀香が入っていないのがうそ臭い。竹下景子はしばらく前の息子の嫁にしたい女優のナンバー1だったし、サユリストという言葉があったほど人気の吉永小百合、引退して伝説になった百恵、NHK好みの東ちづるとほとんどが清純派のイメージのある人ばかり。おまけにほとんどの人が忘れているはずの五十嵐淳子が上位に入っているはで、このデータは操作されているように感じる。

 なんでこんなあほくさいランキングを出したかというと、ある意味ではこれが世間の常識の一端を示しているからだ。世の中人気が人を動かすのは、芸能界ばかりではない。政治家にも人気のある人とない人がいる。もう忘れてしまっただろうか。かつての首相だった村山さんを。あの人はとくに有能とは言えなかったろう。しかし国民には人気があった。そういう人気をただばかにしていたのではいけない。学者さんにはその人気の秘密を分析してほしかった。

 話は変わって、先日新潟県巻町で町長選挙が行われ、現職の笹口町長が再選した。投票率がなんと85%で、前回の45%の約2倍増だ。文句なくすごい数字だ。また宮城の知事選もニュースとして全国に報道された。こういう流れからすると首相だって選挙で選びたいという欲求が出てきても不思議ではない。しかし首相公選は、具体的な争点がないと人気投票になってしまう可能性がある。

 毎年秋になると人気のある芸能人の調査が行われる。NHKのような自由記名だと昨年は宇多田ヒカルがトップ、しかし登録された名簿から選ぶと順位がまったく変わってしまう。調査の目的によりバイアスがかけられると、結果が操作できるという実証でもある。

 かつて禁煙の広がりは一気に加速し、たちまちのうちにオフィスは禁煙が当たり前になった。どうやら日本は、はじめはモタモタしていても一気に移行する体質があるようだ。あれほど反対された消費税もすっかり定着してしまったし、米の自由化だって現実のものとなった。これでいいのかなと首をかしげるとともに、やる気になれば「変われる」という貴重な体験をしたわけでもある。何年か後の日本では、首相選挙を普通のこととして実施しているのだろうか。

 「第三の波」で有名なアルビン・トフラーは、
1少数勢力の重視
2半直接民主主義の確立
3決定権の分散
の3つの原理を基盤とする政治制度を作り出すべきだと主張している。言い換えれば、2は住民投票、3は地方自治である。これは今の日本の課題と同じである。だいたい人間の考えることはどこか似てくるものらしい。

  • 第三の波の政治 新しい文明をめざして アルビン・トフラー、ハイジ・トフラー 中央公論社 1995 NDC304
     原著は、1994年に限定教育版として出版され、下院議長のニュート・ギングリッチが序文を書いている。

  • アサノ知事の冒険 菊池昭典 岩波書店 1998 同時代ライブラリー337 NDC318.4 \1100+tax
     アサノ知事を舞台としたドキュメント。前著よりもつまらない。
(2000-02-07)