インターネット処世術インターネットはバーチャルな世界だけど、情報の発信者や受け手は現実世界の人である。現実世界では、それほど法律やマナーを気にしないでも生きていける。しかしインターネット上では、毎日空気のように接している人から、ときどきホームページを見たりメールを使う程度の人まで、いろいろな接し方の人がいる。だからこそいわゆるインターネット上のエチケットなるものが問題となってくる。 『インターネットセキュリティ入門』は、一般のユーザに向けてセキュリティの具体的な知識を簡潔にまとめている。とくに第4章の「被害者にならないために」と第5章の「加害者にならないために」は、ネット生活者にとっては一読に値する。 この中で佐々木氏は、シャーの著書『ネチケット』から10のルールを引用し、いくつかの注意点をつけ加えている。 面と向かって言えないことは言わない実生活のルールよりも、オンライン上でのルールのほうが緩ければ、これだけで十分なはずである。 他人のミスを許そう日本のンターネット人口は、2000万人ともいわれている。初心者がホームページを作れば、ルール違反を犯す可能性が高くなると思う。そのときに真意を確かめもせずに、これまでのルールを振りかざして責めるのはいかがなものか。ネット経験のない新しい参加者が加われば、ルールだって変わってもいいはずだ。「人は良き意志を持って悪しき行為をなしうる存在である」ということを認めることから、寛容の精神が生まれるのではなかろうか。 インターネットへの関わり方が多様化している現在、暗黙のルールの存在におびえて、自由な情報発信ができないのではまずい。いくつかのサンプル・ルールが明示的に示され、自分はこの基準でホームページを作ると宣言できるほうが、お互いの精神衛生のためにもいいのではないか。あるのかないのか分からない影におびえて、自己規制することほどつまらないことはない。 『インターネットU』を書いた村井氏は、インターネットの標準を提案してきた側の人である。そのためか「インターネットは危ないのではないか」という問いに対して、多くの人が関わるインターネットは現実社会にある安全保障の仕組みよりも、はるかに信用できるし、悪に対する抵抗力があると結論づけている。 第4章の「何がいけないのか」が本書の核心部である。その中で保証における「手かげん」の必要性を説いている。つまりあまり厳密な仕組みを作ってしまうと、そもそも守ろうとした活動までもが動かなくなると指摘しているのだ。どこまで安全にするか、どういう場面で何を守るべきか。これがポイントである。
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