文章読本が書きたい



 斎藤美奈子『文章読本さん江』は、あまたある文章読本を読破してまとめた本である。谷崎潤一郎、三島由紀夫、清水幾太郎の御三家をはじめ、新御三家の本多勝一、丸谷才一、井上ひさしを軸に、文章読本の変遷をたどっている。著者は、作家、ジャーナリスト、学者などの古典的なインテリが多い。

 メールや掲示板でのコミュニケーションのための技術にも触れているけど、実用の書とはいえない。おまけに作文教育の歴史の話がやけに長い。全体的なバランスからみて、楽しむための本に仕上がっている。

 一方の野口悠紀雄『「超」文章法』は、みごとに実用の書である。しかも「超」シリーズの中ではベスト本である。論述文を書くための基本図書として、ロングセラーになるだろう。

 本書のエッセンスをひとことで表現すれば「メッセージこそ重要」である。そのメッセージを伝えるには、骨組みをつくり、見栄えをよくすればよい。そのための具体的なテクニックについて詳しく書いている。

 最終章では「パソコンは仕事開始機械」、「重要性では2割の作業が8割の時間を食う」と述べている。編集、推敲、資料収集にパソコンやインターネットを利用して作業時間を節約し、浮いた時間を考え抜くことにあてようというのが結論である。

 『「超」文章法』は、あきらかに私よりも上級者の書いた本である。しかしものたりなさを感じる。明確なメッセージとテクニックだけで相手に訴えかけることができるのだろうか。そもそも私の書いている文章は、論述文なのだろうか。itは『文章読本さん江』の中にあるのかもしれない。
  • 文章読本さん江 斎藤美奈子 筑摩書房 2002 NDC816 \1700+tax
     文献リストつき

  • 「超」文章法 伝えたいことをどう書くか 野口悠紀雄 中央公論新社 2002 NDC816 \780+tax
     索引つき
(2003-05-22)
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