梨の木坂の香歩さん



梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』を読んだ。

『からくりからくさ』でトルコとキリムが話題になっていたけど、今回はイスタンブールが舞台だ。

『裏庭』は、イギリスで児童文学を学んだ梨木さんらしさが出てしまい、ファンタジー部分が読めなかった。『家守綺譚』と『村田エフェンディ滞土録』の2つに分けたことで、すっきり読めた。ここのところ、ファン度数上がりっぱなしです。

小説を読んでも、作家本人に関心を持つことは少ない。梨木さんはその例外。おかげで苦手なエッセイにまで手を出した。
都会というところがそもそも性に合わないのだった。自分では車に乗るくせに車の排気ガスは嫌いだった。人がたくさんいるところは窒息しそうになる。それくらいだったら、まだ英国の田舎で羊の群れの糞にまみれている方がいいのだ、本当は。(p138)
 『春になったら苺を摘みに』(新潮社)
どうやら世捨て人願望があるようですね。

『ぐるりのこと』(新潮社)で、さらにイメージがはっきりした。九州山地の外れに山小屋を持っていて、近畿圏に住んだことがあり、よく引っ越す。庭では犬を飼い、西郷、群れ、祭り、生活訓、寛容、土着と漂泊…。もう十分。『からくりからくさ』を読みながら想像したイメージどおりだ。

どちらのエッセイも、作品として書かれている。もっとラフに書いた文章を読んでみたい。

(2005-10-18)