笑顔



テレビで、すてきな笑顔にであうことがある。

成田空港で働く女性たちの特集では、管制塔やインフォメーションなどの仕事ぶりを紹介していた。中でもグランド・アテンダントの人は、ほとんど走りっぱなしだ。内田有紀主演のドラマ「ビッグウイング」を思い出す。

チェックインしたのに搭乗していないお客を探して、トランシーバーを片手に駆け回る。出発時間が迫ってくる。見ているこちらまでドキドキする。やっと見つかり定刻どおりに飛行機が出発した。そのときに見せた笑顔がすばらしかった。そして「達成感があります」のひとことを残して去っていった。

じつは外国の飛行場で、あのマヌケな乗客をやってしまったことがある。出発が遅れているというアナウンスを聞いてのんびりしていたら、搭乗がはじまったのに気がつかなかったのだ。テレビを見ながら、まるで自分が彼女をいじめているような錯覚を起こしてしまった。「どうも、お世話をかけてすみません」。

もうひとつは、プロレスにはまってる若いママさんの笑顔。ごひいきレスラーの試合がはじまると、もう放心状態。だっこした赤ちゃんがぐずる。離乳食をあげようとするが、試合に見とれて手が止まってしまう。その魅入られた表情を、カメラがローアングルで正面からとらえる。

映像はいかようにも編集できるし、とんでもないナレーションが入ったりする。しかし人間の表情は正直だ。演技では出せないものが、ブラウン管を通して伝わってくる。何度体験しても、やはり不思議だ。

(2004-05-11)