犬も歩けば



 知り合いの家に行ったときに、大きな犬がいて驚いた。ニコルさんちの犬の子供だという。その時は、へーと思っただけだった。初めてC.W.ニコルを知ったのはいつのことか覚えていない。でも彼を発見したのは、月刊マンガ雑誌「コミック トム」の連載記事だった。自分の半生を伝記風につづりながら、そこで出会った人について書いていた。後に、『C.W.ニコルと21人の男たち』という単行本としてまとめられた。

 そんな彼の新しい本『C.W.ニコルのおいしい交遊録』が出た。たくさんの友人などとの出会いなどを書いたもので、一人一人の記述はあっさりしていて物足りない。この本の中に、作家安部譲二との対談が収められている。ニコルの発言から引用。

 ぼくの父は日本兵に殺されました。だから、ぼくが日本人を憎む理由はいくらでもある。でも、ぼくはとても日本人を愛してる。

 洗脳されやすい愚か者に差別されたらね、それは名誉だと思うべきです。何かを差別する偏見のある社会のなかでも、その中にはちゃんと考えている人がいるはずなんです。そういう人と知り合えたら、絶対、友達になれる。

 あのね、ブランドや世論、法律とか政治家に全部の責任をまかせちゃえばいいというのは動物園にいる動物と同じです。動物園の中にいることは、反抗さえしなければ、すごく楽なんです。命令に従ってれば、なにも考えないですむから。若者にはそんな人間になって欲しくない。だから、自分のセンスがけなされたら反論すればいいし、政治に文句があるなら、その政治家をちゃんと選べって言いたいんです。反感を持ったら、声に出して言える勇気を持って欲しいんですよ。
 その他に歌手の喜納昌吉とも対談している。

  • C.W.ニコルのおいしい交遊録 C.W.ニコル 清水弘文堂 1998 1500円

  • C.W.ニコルと21人の男たち C.W.ニコル 潮出版社 1989
(1998-06-29)