彼方からの手紙



 梨木香歩『からくりからくさ』は、読む人を選ぶ。

 主役は、古い民家に下宿する4人の若い娘たちである。りかちゃんという市松人形を経糸に、染織を緯糸にして物語が進行していく。織機の音や染色のにおいが伝わってきそうだ。

 読みながら、ストーリーの展開よりも、作者のほうに関心が向いていた。こういう作品を書く人って、どんな人なんだろう。自然の豊かな田園地帯で育ったのかな、キリムが好きで中近東を旅したことがあるんだろうな。そんなことばかり考えていた。しだいに性格の異なる4人の登場人物が、どれも作者の分身のように思えてきた。

 でもこの小説、やたらと長い。女の子たちのおしゃべりが、とめどなくつづく感じだ。いったいどうやって終わらせるのか、多少不安にもなった。途中で挿入されるトルコからの手紙だって、もっと短くできるはずだし。

 それはともかく、身近な雑草やクモの巣などに魅入られてしまう彼女たちの会話を聞くと、思わず「そう、そう」と合いの手を入れたくなる。なにか心の琴線に触れられるような感じがする。

 あなたも、この作品に選ばれてみませんか。
(2003-07-12)
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