アメリカン・ドリーム



 イチローの成功で、アメリカン・ドリームというのが本当にあることを実感した。日本でだんとつの一番になれば、世界でも通用するのだ。今その夢を実現しようと努力している人がいる。それは青色発光ダイオード(LED)を開発した中村修二である。

 中村さんはローカルな会社の研究員となり、こつこつと地道な努力を重ねて製品を開発した。それなのに会社の上司からはやっかいもの扱い。どこの会社でもよくあることだ。しかし、彼はまったくめげなかった。社長に直談判して、好きな研究をやらせてほしいと訴えたのだ。苦労のすえ青色LEDの開発に成功し、彼は有名人となった。

 いったん有名になると、それまで無視していた人たちがすり寄ってきたという。しかし日本の大学や企業からの誘いはなく、結局アメリカの大学の教授となった。数億円の給与を提示した企業もあるという。それをけったところは、新庄と似ている。

 中村さんは、学術研究ではなく、物を作るということにこだわっている。そして5年くらいのうちに新しいものを作り、起業するのが夢だという。まさにアメリカン・ドリームをねらっているのだ。90年代の一連の研究でノーベル賞をとるかもしれない。それ以上に大切なことが、新しい研究開発へのチャレンジだという。それが可能なのがアメリカという国らしい。

 出る杭は打たれる。しかし、出すぎた杭は打たれない。これが日本で生きていくうえでの処世術かもしれない。中村さんも日本のあちこちから講演に呼ばれるだろう。しかし自分たちが排除した人からご高説を賜って、自分の会社が何とかなると思っている経営者がいる限り、日本の企業はだめだろう。これからも頭脳流出はつづくに違いない。
(2001-12-15)
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