フォークの時代



 少し前にフォークのナツメロ番組がはやったことがある。まるで同窓会気分で昔話に花が咲く。ある番組では、なぎら健壱が司会をやっていた。ところが彼はあまり多くを語らない。なんかへんだなと思ったら、本を書いていたのだった。

 『日本フォーク私的大全』では、なぎらから見たフォークシンガーの実態をざっくばらんに語っている。登場するのは高石ともや、岡林信康、五つの赤い風船、高田渡、遠藤賢司、加川良、三上寛、斎藤哲夫、吉田拓郎、武蔵野たんぽぽ団、RCサクセッション、泉谷しげる、もんたよしのり、友川かずき、井上陽水、そしてなぎら健壱。高石が応援団で、岡林がボクシング部だったなんて、ぜんぜん知らなかった。

 西岡たかしにファンレターを書き、学校を早退してコンサートを聞きに行っていた高校生のなぎらは、やがて憧れの人たちと同じステージに立つようになる。しかしプロになったとたん、仕事がこなくなる。そして工事人夫をやっていたころ、映画の出演が決まる。「嗚呼!花の応援団・役者やのう」である。その後テレビ出演が多くなり、今やNHKの朝の連続ドラマにまで登場している。

 「およげ!たいやき君」のB面は、なぎらが歌っていた。もし印税契約をしていれば、苦しい時代をもう少しゆとりを持ってすごせただろうに。逃がした魚は大きかった。 (2003-06-06)
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