仮面ライター



 『批評の事情』では44人の評論家を取り上げ、一人一人についてていねいに解説している。このHPですでに取り上げているのは、宮台真司、森永卓郎、大塚英志、中島義道、夏目房之介、近田春夫、斎藤美奈子の7人。そのほかの人は、大半がはじめて聞く名前だった。

 社会、芸術、サブカルチャーなど5つの章に分かれている。いちばんおもしろく読めたのは、文芸の章。斎藤のほか、豊崎由美という書評家が紹介されている。

 つまらないところは飛ばして読んでいると、どうやら論壇という狭い世間があるようだ。そこに住んでいる評論家と出版社がもたれあっているのが、批評の世界のように見うけられた。

 評論家になるくらいだから、みなさん優秀なんだろうけど、インターネットの掲示板や有名サイトとどちらが影響力があるのだろうか。「田口ランディごとき低俗オカルトライター」と批判する山形浩生と、批判されている田口とでは、どちらが読者の心をとらえるのだろうか。おそらく読者数は、山形よりも、田口のメルマガのほうが多いと思うのだけど。

 本の著者紹介を読むと、肩書きばかり並べていたりで、かなり不満がある。この本は人選に?がつくけど、著者紹介集と思えばかなりよくできている。
  • 批評の事情 不良のための論壇案内 永江朗 原書房 2001 NDC041 \1600+tax
(2002-09-05)