「男はつらいよ」シリーズの最高傑作



 「男はつらいよ」シリーズ48作品のうち、第25作目の「ハイビスカスの花」(1980)が放送された。浅丘ルリ子扮するリリー3度目の登場である。旅先で病気になったリリーを看病しに沖縄までやってくる寅は飛行機初体験。そして沖縄の風景や家並みが美しい。

 私はどうもこのシリーズが苦手だ。というよりも山田洋次の美的感覚が肌に合わない。とても不自然なストーリー、清く正しく美しくを地で行くような人物設定、はみ出し者であるはずの寅に毒がないことなど数え上げればきりがない。それでもとらやで一人語りする寅の話は、見事としか言いようがない。まさに芸なのだ。

 誰かが言っていた。「男はつらいよ」というネガティブなタイトルにしたのが成功の一因で、寅の失恋を描いているようで、じつは日本の女の人が持つ悲しみを描いているのだと。多くの人に親しまれた映画ゆえたくさんの映画評論があるだろが、今回はちょっと変わった本を紹介してみよう。
  • 寅さんと日本の民衆 山田洋次 旬報社 1998 NDC778.2 \1000+tax
     「橋のない川」の作者住井すえとの対談

  • 寅さんの民俗学 戦後世相史断章 新谷尚紀(たかのり) 海鳴社 1996 NDC778.2
     民俗学の立場から考察
(1999-05-10)