水木しげるのふるさとマンガ家の中で一番好きな人は、水木しげるである。マンガはそれほどいいと思わないけど、あのすっとぼけた人柄に引かれてしまう。その秘密を解き明かしてくれるのが、『トペトロとの50年』である。 徴兵され南の島に従軍した水木は、兵隊落第で殴られてばかり。ついには爆撃で片腕を失い、マラリアにもかかってしまう。そんな彼をラバウルで癒してくれたのが、トペトロたちだった。日本とはまったく異なる風土と風俗の中で、彼はほんとうにくつろいでしまうのだ。まるでそこで生まれ育ったかのように。 いつしか戦争も終わり、やがて日本へ引き揚げる日がやってくる。このまま残って定住するか、それとも日本へ帰ろうかと迷った末に、彼は帰国を決意する。再び戻ってくることをトペトロに約束して。しかし帰国した彼を待ち受けていたのは、日々食べていかねばならないという生活苦であった。そして南の島のことを思い出すのは、...。 これ以上書くのはやめておこう。読む楽しみを奪ってしまうかもしれないので。水木しげるといえば、すぐに妖怪とかNHKでドラマにもなった「のんのんばあ」を思い浮かべる人が多いだろう。でも私はその名を聞くだけで、南の島で踊り浮かれる水木しげるの姿が目に浮かぶ。このエッセイは、自伝として読んでも一級品である。
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