実業家になろう『かねよりもだ』では、松井証券の松井道夫が同窓の米倉誠一郎を相手に吼えまくっている。松井氏は、日本でのインターネット取引のパイオニアで、価格破壊を実行した人である。 目次を見れば、本書の過激さがわかる。「消費者が王様」とか「会社員はみな商人」あたりはまだ穏当で、「期間限定の独裁者」、「特効薬としてのクラッシュ」、「損切りできない公共事業」、「奴隷契約金としての退職金」になると本領発揮である。日本企業のだめさ、国のだめさをあげつらうだけではなく、キャリアプランの作り方とか税制改革案なども示している。 たとえば「特効薬としてのクラッシュ」では、 米倉:マイク・マンスフィールド元駐日大使がマンスフィールド太平洋問題研究所をつくっています。そこの所長がつくづくいうのは、日本は変わらないなと。自民党も官僚も経営者も変わらないなと。なぜか。日本人は傷んでないというんですね。ホテルオークラで一緒に朝食をとったときに、「見てみろ、みんな豊かだ」と。夜になれば、みんな飲んでるし。このままだったら、いつまでたっても変わらないと。日本経済がクラッシュするなり、銀行がポンポン潰れるなり、そういうことが起きないかぎり、誰も真剣に考えようとしないだろうって。こんな調子で対談が進んでいく。どこかで聞いたような話が多く、憂国おやじ本に分類できる。金融の実務者ゆえに、実態がよりクリアに見えるのだろう。まだ日本に対して甘美な幻想を持っている方に、おすすめしたい一冊である。
<戻る>コマンドでどうぞ
|