マンガについて語ること



 あまりマンガも買えないので、『マンガ批評体系』を拾い読みしてみた。そして初めて知る裏話をしばし楽しんだ。

 トキワ荘は有名だけど、その女性版で「大泉サロン」というのがあったらしい。竹宮恵子、萩尾望都、山岸涼子、山田ミネコなどそうそうたるメンバーが集っていたという。さしずめジャニーズ事務所マンガ版といってもいい。すごいな。

 永井豪は、新人マンガ家は独自のセールス・ポイントを作れ、とアドバイスしている。テーマでも、画面テクニックでも、キャラクターでもいいから、人のやっていない新しいものを創造することが大切とのこと。もっともだ。

 峠あかね(真崎守)によれば、マンガは3つに分類できるそうだ。

1ドラマもの=葛藤を軸に観念に訴える作品
2ストーリーもの=話の展開を軸に感情に訴える作品
3ハプンニングもの=技法と目新しさを軸に感覚に訴える作品
ちなみにあらすじを聞いても理解できない大島弓子の作品群は、1に分類される。なるほど。

 このシリーズはどうもまじめすぎて物足りない。一方『ザ・マンガ家』は、かなり過激な記事で埋まっているし、バラエティも豊富だ。

 山本直樹は、ロットリングの代わりにMacintoshを使っている。しかも「スーパーペイント」という古いソフトウェアを。おかげでアシスタントなしで創作活動ができるそうだ。ふむふむ。

 宮崎駿の「もののけ姫」、富野由悠季の「起動戦士ガンダム」、永井豪の「デビルマン」は、白土三平の系譜だと言っている。ほんとかな。

 しめくくりに、高齢化社会にふさわしい作品を紹介しておこう。

 ぼけ老人が、かわいいリボンをつけて登場する高野文子の『田辺のつる』は、あまりのかわいらしさに思わずほのぼのしてしまう。そしてどこか悲しい。

 名作「AKIRA」で有名な大友克洋の『童夢』は、巨大団地の超常現象を描いている。もちろんキーになるのは、じいさんだ。超能力を使うのに、やたら動き回らないところがいい。

 ホラーものの天才楳図かずおは、『まことちゃん』という単行本にして24巻もあるギャグの長編を書いた。そのもとになったのが『アゲイン』である。若返りの薬を飲んだじいさんが、孫のまことをひき連れて、どたばたのギャグ・ストーリーを展開する。ホラー作家がお笑いを書いたのでびっくりした覚えがある。食べていたそばを吹きそうになり、必死でこらえたものだ。ドッドッドッと走りながらストーリーが展開していくスタイルは、『14歳』などにも引き継がれている。

  • マンガ批評体系 全4巻 竹内オサム、村上知彦編 平凡社 1989 NDC726.1
     別巻は、手塚治虫の特集

  • ザ・マンガ家 宝島社 1998 別冊宝島409 NDC726.1 \857+tax
     別冊宝島13は、70年代までのマンガの特集

  • アゲイン 1 走る男、元太郎 楳図かずお ビズコミュニケーションズジャパン 1995 スーパービジュアル・コミックス
(1999-07-05)
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