筆無精は治らないインターネットをはじめるときに、筆不精が治るかもしれないと思ったが、期待は裏切られた。ついに年賀状まで書かなくなってしまったのだ。それでもいただいたメールには、なるべく早く返事を書くように心がけている。しかしむつかしい質問をされると、いきなり筆がとまる。そして今日もメールを書けなかったという後悔だけが残るのだ。 村上龍は作家だけあって、そんなメールの機微に敏感である。『eメールの達人になる』には、メール初心者が気にすることがらがたくさん盛り込まれている。メールは正確さと簡潔さが一番重要で、受け手に負担をかけない配慮も必要だよ。そんなメール上級者にはバカにされるような内容の本である。しかし私にとってはじゅうぶん役に立った。ちょっと書き出してみると、 自己紹介、書き出し、結びの文、件名などの書き方龍のファンなら実例を読むだけでも楽しいかもしれない。あとがきには、こう書かれている。 メールの達人になるためには、コミュニケーションは本質的に非常に困難なものだという自覚が必要ではないかと思う。またメールの達人というのは案外永遠にコミュニケーションで悩ましい思いをしている人ではないだろうか。これでもう大丈夫と確信した瞬間に、コミュニケーションを正確に簡潔にしなければという危機感が失われる。これまでに寝ぼけたメールを何通も書いてしまったと思う。達人にはなれそうもないので、ぴんぼけなコミュニケーションを楽しむとしよう。
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