桑田佳祐がまだ若かったころ



 しばらく前にNHKが「1000万投票 BS20世紀日本のうた」という歌の国民投票を行った。上位25曲を見てみると、サザン・オールスターズの歌が2曲も選ばれている。「愛の言霊」が23位で、6位には「いとしのエリー」が入っている。

 でたらめな歌詞を口走り、テレビでは宴会芸のような歌い方をさせられていたサザンだったが、3枚目のシングル「いとしのエリー」が出たときは本当にびっくりした。それまでのサザンに対するイメージをみごとに壊してくれたし、俺だってこんな曲が作れるんだぜ!という心意気を感じたのだ。このヒット曲の生まれた経緯が『ただの歌詞じゃねえかこんなもん』に書いてある。

 6枚目のLPまでの制作過程が桑田自身の言葉で語られていて、彼の音楽に対する考えの変化もよく分かる。中には1問1答のコーナーもあり、ジョン・レノンを神と評している。ぜひ7枚目以降のコメントも聞いてみたいものだ。

 文庫本の解説を村上龍が書いている。村上曰く、サザンは日本に初めて現れたポップスバンドだ、と誉めちぎっている。そして桑田の歌詞は革命的にデリケートだと言う。私には相対的な評価はできないので、この際作家の言葉を信じるとしよう。

 今は新曲「TSUNAMI」が大ヒット中だ。どのフレーズをとってもかつて桑田が作った曲を連想してしまう。まるでベストアルバムを1つにまとめてしまったような曲だ。でも若い人には桑田サウンドのエッセンスを聞けるわけで、ヒットするのも当たり前なのかもしれない。「桑田さんは、作るのがうまいね…」というやっかみ半分の業界人のつぶやきが聞こえてきそうだ。
  • ただの歌詞じゃねえかこんなもん 桑田佳祐 新潮社 1984 新潮文庫
     初期の88曲の歌詞と桑田の語りを編集した本。
(2000-03-31)