あなたの遺伝子は汚染されている健康願望が異様に高まったのは、ここ数年のことだろうか。古くは紅茶きのこに始まり、最近では栄養学を越えて、医療直結型の健康食品がもてはやされる。 テレビでココアがいいといえば、ココアが売れ、モロヘイヤがいいといえば、モロヘイヤが売れる。しかし飛びつく人は、ある物を食べれば、特定の病気の予防になる、というまるで近代医学の薬と同じ発想をしていることに気づいていない。だから健康願望が強まるだけで、けっして健康な暮らしをするわけではないのだ。 医療でも同じ根っこを感じる。名医リストのような本が出れば飛びつき、大病院志向をやめようとはしない。医者に聞けばいいものを、わざわざ薬の本を見て自分の薬を照合しようとする。その延長に臓器移植があると思う。そこにあるのは、壊れた部品=臓器は取り替えればいいさ、という感覚だ。 そんな人でも、そうでない人でも、医者とのつきあいかたをどうすればいいか、けっこう悩むのではないだろうか。そんな時にヒントを与えてくれる本もある。たとえば、永井明『お医者さんには謎がある』では、ずばり患者の達人になる心得10ヶ条を教えてくれる。 著者は元内科医ゆえ、医師の気持ちをふまえた上で助言してくれる。彼は、医者をやめ文筆業に転業し、「バカヤローX」の監督もやったことがある。また、エイズウィルスのアフリカ起源説に疑問を抱き、ベトナム戦争に向けて作られた米軍の生物兵器だったという仮説を唱えている。 核の安定とDNAの安定の上にわれわれ人間の生活が成り立っているのは、科学上の事実だ。現代は、この両者ともに脅かされている。それを社会問題としてみれば環境問題になり、健康問題としてみれば遺伝子汚染になる。 『あなたの遺伝子は汚染されている』では、エイズなどの病原体の逆襲、バイオ事故、遺伝子組み換え食品、オゾン層の破壊や酸性雨による遺伝子破壊、水道水に含まれる発ガン物質、電磁波、核廃棄物などの問題を、遺伝子汚染というひとつのキーワードでまとめあげている。
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