若年寄の遠吠え



 勝谷誠彦、ラサール石井『1.5流が日本を救う』は、中年おやじの憂国の書である。灘とラ・サールという名門受験校を卒業した二人が、波乱万丈の高校生活をふりかえる。それは頭の切れる少年がアホになる過程でもあった。しかし腐っても鯛。こんな対談本を生み出している。
勝谷:それを出版の世界でいわせていただけばですね、極道の元妻が弁護士になることで過去がチャラになったからって、説教たれる本を出して、これが大ベストセラーですよ。僕は、正直言えば、乙武君の本だってあんまり好きじゃないんですけれど、要するに一億総露悪趣味の時代です。(中略)いまは次々と新しい異形のものが登場しては消えていくだけ。つまり、ちょっと毛色の変わった消費の対象でしかないんですよ。
 このあたりから、憂国おやじの本領を発揮しはじめる。石井も負けずに、
差別用語は使っちゃいけないって、放送局も出版社もものすごく神経使うくせに、実際にやっていることは見世物小屋と同じなんですよね。僕、こういう流行って、ものすごくゆがんでると思うよ。
 そして最後にたどりつく核心部は、
勝谷:正直言って会社やめるのは本当に怖かった。義理の"義"の一文字で一千万以上の年収をうっちゃって、失業保険をもらいに行くわけですからね。でもこの恐怖は、この時代、誰もが一度は乗り越えるべき恐怖だと思うんです。そうしないと、日本中が長野みたいな恐怖政治になってしまう。先が見えない時代に突入して、みんなが既存の組織にしがみつこうとすればするほど、組織は個人に対して暴虐になれるんです。いまや、日本の組織が腐臭を放っているのは、そのせいですよ。僕は、サラリーマンも一回自分自身をリストラすることが大事だと思う。
 失業がこわいのは、今いるポジションを失うからだ。自分のやっている仕事が社会的にみてまっとうなことかどうか、そこをまず考えたい。短気をおこすのは損かもしれないが、SOHOという名のフリーターになる道もある。

 勝谷の締めの言葉は、「徹底した楽観主義に基づく志」を持とうよ、だった。
  • 1.5流が日本を救う 勝谷誠彦、ラサール石井 ベストセラーズ 2001 NDC914.6 \1,500+tax
     対談日:2000/6-2001/1、用語解説つき
(2003-08-15)
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