収支トントンの経営



 片岡勝『儲けはあとからついてくる』は、サブタイトルにあるようにコミュニティビジネス=問題解決ビジネスの入門書である。コミュニティビジネスとは、地域社会で必要とされているものを提供するビジネスのことである。地域の人たちが、自分にできることを持ち寄ることで成り立つ。社会起業家のすすめといってもいい。

 彼が社長をつとめるプレス・オールターナティブ(PA)の運営方法はとてもユニークである。
 PAでは、一切ノウハウというものは教えない。仕事のマニュアルなどといったものも存在しない。では、何をしているのかといえば、「自分の頭で考える」ということを教えている。
 スタッフは、本当の意味で賢くあること、問題発見・問題解決能力を持つことを求められる。
 単にお勉強ができるだけの人ではいけない。このタイプの人たちはノウハウを学ぶのが得意だが、本当の意味で賢いかどうかは疑問だ。(中略)
 スタッフに課せられるのは、相手の聞きたいこと、求めていることを正確に感じて、それに対する「解」を用意することだ。わからないときは、勉強して研究してどうしたらいいのかを自分で必死に考える。このプロセスを経験することこそが、PAの能力開発である。
 最近、起業がブームらしい。しかし、ただ会社を作ったってうまくいくわけがない。片岡氏もひとことコメントしている。
 会社をやめる人に言いたいのは、「問題を発見し」「解決を実践し」「仲間が集まって」くれば、物事は独りでにうまくいくということだ。お金はあとからついてくる。自分がやったことが社会に必要なら、それがカンパという形でも、サービスへの対価というビジネスでも、行政の予算であっても、とにかく支援してくれる人がいる限り、支えられ継続するものだ。(中略)そこがわからない人は、「最も大事な何か」がわかっていない。
 世の中には、好きなことをやってビンボーになる人がいる。社会から求められることをやってビンボーになるのもいいかもしれない。
(2003-11-23)
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