放射線のおもらしはみっともない



 JCOの臨界事故から1年たった。『恐怖の臨界事故』には事故のようすが時間に沿ってまとめられている。

 これを見るとJCOが東海村役場に連絡するまでに1時間もかかっている。

 現場へかけつけた救急隊員は、放射線がもれていることを知らなかったので敷地内に入ってしまった。核燃料を作っているくらいの会社なら、消防隊を自前で持っているはずだから、会社の入り口まで救急車を出せばよかったのだ。消防署は、自分の管轄内にどんな企業があるか、どんな商店があるか把握しているはず。だから署長は隊員に敷地内に入らないように指示を出すべきだったのだ。こんなことで被曝してしまった隊員が気の毒だ。

 近辺の小学校などは、生徒を帰宅させずに学校に閉じ込めた。もし放射性物質が降ってきていたら、避難できなくなってしまう。私が親なら、さっさと子どもを車で迎えに行き、そのまま親戚の家にでも逃げ込んだだろう。

 行政が無力なのは当然だけど、テレビの報道内容も無内容だった。当日は放射性物質が外界に放出されたかどうか分かっていないのだから、一番重要な報道は風向きと風力の分布図を放送することなのだ。余計な情報は二の次だ。天気の番組だって、どこでどのくらいの雨量があったかを時間を追ってグラフィックで見せてくれる。同じように事故発生からの風の情報を時系列で教えてくれればいい。そうすれば風上の人は比較的安心できるし、風下の人は自主的に避難できる。

 ところで自分の家から東海村までの距離と方角を知ってるだろうか? 私は避難こそしなかったが、事故の概要が分かるまでは念のため、雨にも濡れず水も汲み置きしか飲まなかった。

 本に書かれているように、10キロ圏内の屋内退避要請の解除と350メートル内の退避要請の解除も早すぎたようだ。行政を信じた住民の健康はどうなるのだろうか。

 今回の事故はたしかに一企業のずさんな管理が原因で、しかも予想外の事態が起こった。しかし永年にわたって原子力施設を受け入れてきた住民が、不幸を招き寄せたのではないか。
  • 恐怖の臨界事故 原子力資料情報室編 岩波書店 1999 岩波ブックレット496 NDC543.5 \440+tax
(2000-09-30)