本は売れなくて、あたりまえだのクラッカー



 『だれが本を殺すのか』とは、なんとも刺激的なタイトルである。佐野真一は「本を殺そうとしているのはだれなのか」を探っていく。まるでミステリー仕立てである。驚いたのはタイトルだけではない。分量が多いのだ。本文が約460ページ、取材した人は数しれず。そしてそれを全部詰め込んだのがこの本なのだ。

 各章のタイトルを見ると、書店、流通、版元、地方出版、編集者、図書館、書評、電子出版となっている。エピローグで著者について簡単にふれているが、読者という章がない。一番大切なはずなのに。

 読者にそっぽを向かれた本が、毎年大量に出版される。だから当然のことながら売れない。それでも業界人は生産調整ができないし、構造改革もできない。エンドユーザーを満足させられない業界は、衰退するしかない。

 ふだんから近所の図書館に絶望している著者は、図書館人に「図書館は無料貸本屋か」という疑問をぶつける。なんでこんなことをうだうだ話しているのだろう。無料貸本屋に決まってるじゃないか。本を買いたくない人、本を買えない人に、もうすでに売っていない本から新刊の本までを提供するのが図書館だろうに。

 それから市町村の図書館に司書はいらない。必要なのは本なのである。レファレンスが必要なら都道府県の図書館へ行けばいい。人よりも本を!

 それはともかく、玉手箱のような楽しい本である。部分的には何度も読み返してしまった。またいつか読み直しそうな予感がする。
(2002-01-18)
<戻る>コマンドでどうぞ