「ガラスの仮面」星取り表



 いやー、まいった。また『ガラスの仮面』を読んでしまった。この前はじっくり2週間かけて読んだのに、今回は5日ほどで読み終わってしまった。家人などは、寝不足で目の下にクマを作ってまで読んでいた。それにしても、続きが読みたい。もう4年も新刊が出ていないのだ。美内すずえは何をしている。禁断症状が出てしまったじゃないか。

 それもこれも8月に「ガラスの仮面2」を再放送したのがいけないのだ。あらためて原作を読んでみると、ドラマではよく分からなかった劇中劇のストーリーが理解できる。なかでも「たけくらべ」や「女海賊ビアンカ」は好きだな。

 「ガラスの仮面」は舞台でもやっているし、アニメ化もされている。ついでだから映画化もしてほしい。北島マヤは、池脇千鶴が適役だと思う。速水真澄には、豊川悦司。月影千草には、ピーターを。監督は、大林さんや「エコエコアザラク」を作った佐藤嗣麻子はどうだろう。プロデュースはぜひ仙頭武則に。こんな映画を見てみたい。

 私は、文庫本で読んだので、解説も23人分読んだ。中にはいい文章もあるが、なんだこりゃという文章もある。そこでちょっと星取り表を作ってみた。だけどあくまで私の好みなのであしからず。

「ガラスの仮面」星取り表
解説者職業内容
1中村保雄能面研究家人間にとって仮面とは何か
2赤川次郎作家登場人物に命を与えているもの
3大竹しのぶ女優私の中の北島マヤ
4日向章一郎作家「人は情熱なしには何をも成しえない」
5清水きよしパントマイミスト美内さんに取材を受けた
6辻真先作家再読に耐え、馬力のある作品だ
7中島梓評論家演劇マンガが成功した理由
8林真理子作家人間の五感に訴えてくるマンガ
9鴻上尚史演出家演劇礼賛
10林葉直子将棋棋士父にも読ませたい
11今野登茂子ミュージシャン無内容
12呉智英評論家おもしろさの分析
13七島伸治高岡書店連載雑誌「花とゆめ」を買う人
14工藤夕貴女優熱烈なファンの心情
15森村桂作家ガラスの仮面ケーキの作り方
16小川範子女優演劇の手引き書
17市川染五郎歌舞伎俳優役になりきるということ
18家田荘子作家私も女優だった
19富田靖子女優姫川亜弓が大好き
20蜷川幸雄演出家美内さんに会ったことがある
21森下典子ルポライター北島マヤ=美内すずえ
22柳美里作家演技論
23安達祐実女優テレビドラマ


 ざっと見たところ、演劇関係者の文はつまらない。それにくらべ作家は平均点が高い。読んで楽しいのは、熱烈ファン過ぎて道を誤ってしまった人の話。文庫本の解説が読みたくて買う人もいるのに、投げやりな文章を書いてはいけない。私が編集者なら、へぼい文章を書いたらボツにしちゃうぞ。

 大竹しのぶは、舞台で北島マヤを演じている。舞台の演出は好評とはいえなかったらしいが、当時では彼女しか適役はいなかったろう。なにしろ彼女のデビュー作「青春の門」は、3D映画を見ているかと錯覚するほど迫力があった。まさに衝撃のデビューだった。

 鴻上尚史は、「演劇は俳優のもので、映画は監督のもので、テレビドラマは脚本家のもの」と言っている。おおむね当たっているけど、演劇は一部の人しか見られないという致命的な欠陥がある。そこがテレビや映画との違いだ。

 呉智英は、マンガ評論の専門家である。『現代マンガの全体像』なんていう解説書も書いている。評論とは何かを自覚していて、私のような紹介文とはちょっとレベルが違う。

 おなじみの中島梓、柳美里も文を寄せている。

 「ガラスの仮面」大好き女優の富田靖子と工藤夕貴には、映画化の際には何らかの役で出演してもらいたい。富田靖子は「アイコ十六歳」でデビューし、宮崎駿のアニメの大ファンでもある。工藤夕貴は「台風クラブ」が印象に残る。

 それにしても、なぜ中野翠、橋本治などに原稿を依頼しないのか。佐藤嗣麻子が書いた萩尾望都の「半神」の解説は名文だった。このくらいのレベルの文章を載せるのが読者に対する礼儀だと思うのだけど。
     
  • ガラスの仮面 美内すずえ 白泉社 1994 白泉社文庫

  • 現代マンガの全体像 呉智英 双葉社 1997 \544
     マンガを歴史的に概観した出版文化賞クラスの著作
(1999-09-20)

追記:文庫版第23巻が出たので追加した。
(2000-03-17)
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