頭のダイエット



 外国で紛争が起こるたびに、やれやれと思ってしまう。その主要な原因は、国際政治に対する理解の欠如にある。しかし、そんなことを今さら勉強する気にもなれないので、テレビの解説で済ませてしまう。そんな私でも理解できる本があった。

 藤原帰一『「正しい戦争」は本当にあるのか』では、「正しい戦争はあるのか」、「核兵器が平和を支えているのか」、「独裁政権を倒さなければ平和はやってこないのか」という問いに答えようとしている。並みの学者なら逃げ出したいようなテーマについて語る藤原と、逃がすものかと質問攻めにする渋谷陽一の合作本だ。

 冷戦後、民主主義がデファクトスタンダードになったという。
(国際会議で)デモクラシーじゃない政府をどう変えていくのかって、もう思いっきり内政干渉そのものの議論をしている。現代の国際社会では、デモクラシーじゃない政府は政府の資格なんかないんだってのが、当然の前提にされてました。だから民主主義じゃなくちゃダメっていうのはアメリカの超保守だけの主張じゃないんですね。ブッシュ政権がアフガニスタンとかイラクの民主化と言うとき、背景にはこんな動きもあるんです。
 と説明されても、それで引っ込む渋谷ではない。さらに「どの政府に国家としての資格があるかないかっていうのを、そんなに簡単に外から決めてもいいもんなんでしょうか」と突っ込む。

 藤原がまた説明すると、「かわいそうな人たちを独裁という暴力から救うっていうよいことをしてるつもりで、実際には爆弾を落とす。ちょっと考えればめちゃくちゃ(笑)」と受けとめる。

 こんな具合に話が進んでいく。断片的な知識でぐちゃぐちゃになった頭を整理するのに最適な本だ。
(2004-04-23)