英語妄想とアメリカ幻想『英語を学べばバカになる』というタイトルを見て、本書を敬遠するのはもったいない。むしろサブタイトルの方が内容にマッチしている。 第2章「英語支配の虚像」の途中までは、どこかで聞いたような話が多くておもしろくない。やがて本書の核心部、アメリカ論に入っていく。 「アメリカの自由とは、勝ち組と多数派の自由なのである」(p113) 「コミュニティーとは、集団の縄張りに他ならない」(p131) 「政教分離とは、政治と宗教を分離することであって、政治と神を分離することではない」(p156) それゆえ「アメリカ新宗教は、ほとんどビジネス」であっても、政府はいっさい口を出さない。 しかも教会は階級や人種で明確に区分されており、社会的にのし上がると、別のコミュニティに引っ越すばかりでなく、しばしば宗派まで変える。 こういう社会の上で成り立つアメリカ型民主主義は、ヨーロッパのような中央集権的な国民国家とは異なる、と著者は説明する。 このようにアメリカをヨーロッパ、とくにフランスとの対比で解説しているのが本書の特徴だ。 EUは、アメリカではなくロシアや日本との連携を志向している。EUが英語に一極化しないのは、殺し合いの歴史から学んだからである。どんなに非効率的であっても、互いの文化や言語を尊重しあうことを優先している。 こういう現状認識のもと、グローバル化のつもりの英語偏重は、英語世界への閉じこもりになってしまうと警告を発している。 残念ながら、著者のグローバル化の話を批判的に読む力が私にはない。フランス人から見たアメリカ像を日本人が解説してくれることで、少しは新しい視点を得られたかもしれない。それが何だったのかわかるまで、時間がかかりそうだ。
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