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産経新聞夕刊 言葉の雑学より

産経新聞夕刊コラム(言葉の雑学)

2010.1.29
◎直会:なおらい
「”なほりあひ”の約とも、”なほら”+”ふ”の名詞形ともいう」と小学館古語大辞典に。神事の終了後、供物やお神酒を下げて食し、平常に復する意。今は、もっと広く行事の後の宴会の意に用いることも。仏事なら「精進落とし」に当たろうか。

2009.9.7-9.19

◎睦月 むつき。陰暦1月の異称。
大言海は12の月の異称は「スベテ稲禾(とうか)生塾ノ次第を逐(お)ヒテ、名ヅケシナリ」とし、
ムツキは「実月(ムツキ)ノ義、稲ノ実ヲ、始メテ水ニ浸ス月ナリ」と説明。
農が人の営みの基本だったころの記憶がふとよみがえる。

◎如月 きさらぎ。陰暦2月の異称。
「衣更着」とも書く。
小学館古語辞典は、「寒くて着物をさらに重ねて着る月の意という」との補注を記述するが、
大言海は、「萌揺月(キサユラギヅキ)ノ略ナラム」として、「草木ノ萌(キザ)シ出(い)ヅル月ノ意」とのことだ。

◎弥生 やよい。陰暦3月の異称。
岩波古語辞典に「イヤオヒの転という」という補注がある。
イヤは”いよいよますます”の意、オヒは「生ヒ」だ。
陰暦の月の異称は農業にかかわる語とする大言海は「水ニ浸シタル稲ノ実ノ、イヨイヨ生ヒ延ブル意」と説明している。

◎卯月 うづき。陰暦4月の異称。
大言海は「植月(ウツキ)ノ義、稲種を植うる月」と説明している。
ウヅキのウを卯と書くのは、十二支でウと読ませるのを借りた当て字だ。
別名卯の花月ともいうので、卯の花(ウヅキ)は卯月のころに咲く花という心かもしれない。

◎皐月 さつき。陰暦の5月の異称。
大言海は「早苗月ノ略」とし、「早苗ヲ植ウル月ノ義ナリ」とする。
漢語のコウゲツ(皐月)を国語で読む熟字訓。皐は皋の異字体だが、「皋月」はあまり一般的でない。
もっとも、皐も難字で、五月でサツキと読ませることが多い。

◎水無月 みなづき。陰暦6月。
大言海は「田水之月(タミノツキ)ノ略転、田ニ水ヲ湛(たた)フル月ノ意」としている。
岩波古語辞典に「”水無月”と書くのは後世の当て字」との補注あり。
稲を育てるのに水が不可欠だというのに、水無月とは何という書きようか。

◎文月 ふみづき。陰暦の7月の異称。小学館古語辞典などによると、ふみづき→ふんづき→ふづきと転じた語。
大言海は「稲ノ穂ノ含月(フフミヅキ)の義」と、あくまでも農事との関連で語源を考える。
稲穂を含む月の意だ。であれば、文月は当て字ということになる。

◎葉月 はづき。古語辞典には「はづき」で項目を立てるものが多く、古くは清音だったようだ。
陰暦8月の異称。大言海は「稲穂ノ発月(ハリヅキ)ノ意ト云(い)フ」とする一方、「葉落月」とも思案。
倭訓栞に「黄葉ノ時ニ及ブヲ云フメリ」とあるのを考慮したか。

◎長月 ながつき。陰暦9月の異称。
字面から、夜長月の上略と解して何となく収まりがつきそうが、
農事にこだわる大言海は「稲熟(イナアガリ)月ノ約カト云(い)フ」とし、
「夜長月ノ意ト云フハイカガ」とわざわざ疑念を記述。
「上がる」には実るの意もある。

◎神無月 かんなづき。
この月を出雲では神在(かみあり)月とするとの由。
神無の字面から、国中の神々が出雲に集まると想定したものか。
大言海は「醸成(カミナシ)月ノ義」とし、翌月の新嘗(にいなめ)祭に備え旨飯(うまいい)をかみ、酒を造る月の意とする。

◎霜月 しもつき。陰暦11月の異称。
「しもふりづき」ともいうのは、字面に引かれてできた言葉か。
大言海は「食物(ヲシモノ)月ノ略、新嘗(にいなめ)祭ヲ初トシ、民間ニテモ、新饗(ニヒアヘ)ス」とする。
神々に新穀を供えて食し、天地の恵みに感謝する月だ。

◎師走 しわす。
先生も走り回る歳末のせわしない月というのは俗解だろう。
極月とも書く。
「歳極(トシハツ)ノ略転カト云(い)フ、或(あるい)ハ、万事為果(シハ)つ月ノ意」とは大言海。
これで農事は一段落という心だ。
言葉の農とのかかわりが見えて面白い。

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