オリオン座の星々
〜 アブド=ラハマーン・スーフィー عبد الرحمان الصوفي ‘Abd ar-raḥmān aṣ-Ṣūfī の
『星座の書』 كتاب صور الكواكب Kitāb ṣuwar al-kawākibより 〜
「ジャッバール(大男=オーリオーン)」الجبّار al-ğabbār すなわち「ジャウザー(意味不明)」الجوزاء al-ğawzā’ の星座。その星々は図の中に28個である。これは立っている男の図(姿)で、黄道の南側にあり、頭と両肩と両手両足をもった人の姿と何か似ている。「ジャッバール」と呼ばれるのは、それが2つの椅子の上にあり、手には杖、中央には剣があるからである。
この星座の第1星は、頭のところにある雲のようなものである。これは小さな3つの星で、小さな三角の形に集まっている。プトレマイオスはその三角形の真中を一つの星の位置とし、『アルマゲスト』の中にその経度と緯度を与えている。この星は両肩の間の頭のところにあり、両肩より北の方に寄っている。また、左の肩により近い。
第2星は、右の肩にある、明るくて大きくて赤い星で、小さめの1等星である。これと頭のところにある3つの星との間は、およそ3ジラーアである。アストロラーブに描かれる。「マンキブ・ジャウザー(ジャウザーの肩)」منكب الجوزاء mankib al-ğawzā’ あるいはまた「ヤド・ジャウザー(ジャウザーの手)」يد الجوزاء yad al-ğawzā’ と呼ばれる。
第3星は、左の肩にあり、右肩にある星の前で、2等星である。プトレマイオスは大きめの〔2等星〕であると言っている。これと右肩との間は4ジラーア以上、これと頭のところの3つの星との間はおよそ2ジラーアである。
第4星は、左肩にある第3星の近くに続くもので、小さめの4等星である。これと第3星の間は 2/3ジラーアの(距離の)量がある。
第5星は、第2星の北にあり、わずかに東に寄っていて、右肘のところにある。4等星である。これと第2星の間は、北東に1ジラーア以上である。
第6星は、第5星の北、右腕のところにあり、6等星である。これと第5星との間は2ジラーアより近い。この星は第5星と第2星とでわずかにカーブした線をなしており、そのカーブの膨らみは北に向かっている。
第7星は、第6星の北側近くにある2つの近接した星の後の方であり、これと第6星との間は1ジラーアより少ない。5等星である。プトレマイオスは《4等星である》と言っている。右手の中にある。
第8星は、第7星の前にあり、その近くにある。5等星である。プトレマイオスはこれも4等星であると言っている。右手の中にある。これと第7星との間は、北西に1シブルほどである。
第9星は、第7星と第8星の北にある近接した小さな2つの星の後の方である。これと第7星との間は、北(に)1ジラーアより少ない。6等星である。これも右手のところにある。
第10星は、第7星に先立ち、それに接している。これも6等星である。これも右手のところにある。
第11星は、右手のところにある4つの星の北側で西にずれている2つの星の前の方である。これは牡牛の南側の角にある第19星に続くものである。牡牛の南の角にあるものとの間は1ジラーア半強である。5等星である。ジャッバールの右手にある杖のところにある。
第12星は、その2つの星の後の方で、小さめの5等星である。プトレマイオスは単に〔5等星と〕述べている。これは2重星である。というのも、それの近くに(別の)星が接しているからである。これも杖のところにある。第11星との間は1ジラーアより少ない。第11星および牡牛の角の端にある第19星とともに、直線に似た線をなす。
第13星は、左肩の下にある接近して並んだ4つの星の(一番)後のものである。4等星である。両肩の間にあるものである(?)。両肩から南にずれている。右肩にある星との間はおよそ1ジラーア半である。
第14星は、第13星に先立つもので、その近くにある。6等星である。第13星との間は1シブル強である。
第15星は、第14星に先立つもので、その近くにある。6等星である。第14星との間は1ジラーア弱である。
第16星は、第15星に先立つもので、その近くにある。5等星である。第15星との間は1シブルほどである。これは4つの星の一番前のもので、わずかに南にずれている。4つの星全体は2ジラーア弱である。
第17星は、牡牛の南側の角の中央にある第17星と第18星の南にある。牡牛の角にある第17星との間は1ジラーア強である。これは左袖にある弧の形をした9つの星の一番北側の星である。4等星である。
第18星は、第17星に先立つもので、その近くにある。これは9つの星の2番目で、第17星から南西に1シブル強ずれている。これも4等星である。
第19星は、第18星の南の星で、その近くにある。4等星である。第18星から南に1ジラーア強ずれている。9つの星の3番目である。
第20星は、第19星から南へおよそ1ジラーア半ずれている。4等星である。9つの星の4番目である。
第21星は、第20星から1ジラーア弱南にずれている。4等星である。9つの星の5番目である。
第22星は、第21星から南へ 2/3 ジラーア強ずれている。小さめの3等星である。プトレマイオスは単に(3等星と)言っている。9つの星の6番目である。
第23星は、第22星から南へ、これも 2/3 ジラーアほどずれている。小さめの3等星である。プトレマイオスは単に(3等星と)言っている。9つの星の7番目である。
第24星は、第23星から南へ1 2/3 ジラーアほどずれている。小さめの3等星である。プトレマイオスは単に(3等星と)述べている。9つの星の8番目である。
第25星は、第24星から東南に半ジラーアだけずれている。4等星である。プトレマイオスは3等星であると言っている。弧の形をした9つの星の南端にある。
第26星は、帯のところにある明るい3つの星の一番前のもので、2等星である。
第27星は、この3つの星の中央のもので、これも2等星である。
第28星は、この3つの星の一番後のもので、これも2等星である。この星の南に4等星の星がある。両者の間は1シブル弱である。プトレマイオスはこれに言及していない。
第29星は、第26星から南に1ジラーアずれている。剣の柄(つか)の端にある。小さめの3等星である。プトレマイオスは単に(3等星と)言っている。
第30星は、第28星 ―― 帯のところにある3つの星の一番後のもの ―― の下に接近して並んだ3つの星の一番北のものである。そこから南へ1ジラーア強ずれている。4等星である。剣の端にある。
第31星は、この3つの星の中央のものである。小さめの3等星である。第30星との間は1シブル弱である。
第32星は、それの一番南のものである。第31星との間は1シブル弱である。小さめの3等星である。プトレマイオスは単に(3等星と)言っている。
第33星は、剣の端にある3つの星の南にある2つの星の後のほうである。小さめの4等星である。プトレマイオスは単に(4等星と)言っている。第32星との間はおよそ 2/3 ジラーアである。
第34星は、この2つの星の先の方である。これも小さめの4等星である。プトレマイオスは単に(4等星と)言っている。両者の間はおよそ 2/3 ジラーアである。この2つの星は第32星とともに、正三角形に似た形をつくっている。
第35星は、左足のところのある明るくて大きな星で、1等星である。アストロラーブに描かれる。「リジュル・ジャウザー(ジャウザーの足)」رجل الجوزاء riğl al-ğawzā’ と呼ばれる。
第36星は、この足のくるぶしの上にあって、明るい星(第35星)から北東におよそ 2/3 ジラーアずれている。大きめの4等星である。
第37星は、左のかかとの下にあって、第36星の後に続く。そこから南東に1ジラーアずれている。4等星である。
第38星は、右足のところにあり、大きめの3等星である。プトレマイオスは膝の下にあると述べている。足の方が似つかわしい。
アラブの人たちはこの星座の第1星 ―― 頭のところにある近接した3つの小さな星で、“サー” ث ṯ (というアラビア文字)の点に似たもの ―― を「ハクア(斑点)」الهقعة al-haq‘a あるいはまた「ハクア・ジャウザー(ジャウザ−の斑点)」هقعة الجوزاء haq‘at al-ğawzā’ と呼んでいる。また、「バハーティー?(意味不明)」البحاتي al-baḥātī ? ( النجاتي annağātī ? etc.)、「バハヤート?(意味不明)」 البحيات al-baḥyāt ? ( النجيات an-nağyāt ? etc.)、「バハタ?(意味不明)」 البحتة al-baḥta ? ( النجية an-nağya ? etc.)、さらには、似ているので「アサーフィー(こんろ石)」الأثافي al-aṯāfī ―― これは月の28宿の第5番目の宿である ―― とも伝えられている。
(右肩のところにある)明るく大きな星(第2星)は「マンキブ・ジャウザー(ジャウザーの肩)」منكب الجوزاء mankib al-ğawzā’ あるいは「ヤド・ジャウザー(ジャウザーの手)」يد الجوزاء yad al-ğawzā’ と呼ばれる。「ミルザム・ジャウザー(ジャウザーのミルザム、意味不明)」مرزم الجوزاء mirzam al-ğawzā’ とも伝えられるが、これは誤りである。というのは、両「シアラーのミルザム」مرزمي الشعريين mirzamay aš-ši‘rayayn のように、明るい星に先立つ星をミルザムと呼ぶのが、アラブの人たちの習慣だからである。
左肩にある第3星は「ナージズ(意味不明)」الناجذ an-nāğiḏ あるいはまた「ミルザム」المرزم al-mirzam と呼ばれる。
中央にある並んだ3つの星 ―― 第26・27・28星 ―― は「ミンタカ・ジャウザー(ジャウザーの帯)」منطقة الجوزاء minṭaqat al-ğawzā’, 「ニターク・ジャウザー(同)」نطاق
الجوزاء niṭaq al-ğawzā’,「ニザーム(真珠紐)」النظام an-niẓām,「ナズム(同)」النظم an-naẓm と呼ばれる。また、「ナズム・ジャウザー(ジャウザーの真珠紐)」نظم الجوزاء naẓm al-ğawzā’,「ファカール・ジャウザー(ジャウザーの背骨)」فقار الجوزاء faqār al-ğawzā’ とも伝えられている。
第28星の下にあって、下に向かって近接して列をなしている下っている3つの星、すなわち第30・31・32星は、「ヌカト(点々)?」 النقط an-nuqat ? ( اللفظ al-LFẒ ?, اللقط al-LQṬ ?, اللعط al-L‘Ṭ ? ) あるいはまた「サイフ・ジャッバール(ジャッバールの剣)」سيف جبّار sayf al-ğabbār と呼ばれる。
左足にある明るくて大きな第35星は、「リジュル・ジャウザー(ジャウザーの足)」رجل
الجوزاء riğl al-ğawzā’ と呼ばれ、あるいは「ラーアィー・ジャウザー(ジャウザーの世話人)」راعي الجوزاء rā‘ī al-ğawzā’ とも呼ばれる。《左足にある第35星は「ナージズ」الناجذ an-nāğiḏ と呼ばれる》と伝えられ、また《右肩にある赤い第2星は「ラーアィー・ジャウザー」、左肩にある星は「ミルザム」と呼ばれる》とも伝えられる。しかし、これは「ミルザム」の方がもっともらしい。というのも、これは明るい赤い星(「ヤド・ジャウザー」)に先立っているのであるから。
袖のところにある弧をなした9つの星、すなわち第17星から第25星までは「タージュ・ジャウザー(ジャウザーの冠)」تاج الجوزاء tāğ al-ğawzā’ あるいは「ザワーイブ・ジャウザー(ジャウザーの巻き毛)」ذوائب الجوزاء ḏawā'ib al-ğawzā’ と呼ばれる。