「イタル君、かわいい・・」

「は、はいっ?」

「うーん・・・そうね、じゃあとりあえず、私の家に行きましょうか?」

「え?えっ?」

「私の家でお話するの、えっちなお話もね・・・」

「あ・・はいぃ・・・」

 

うー、どきどきしすぎて息が苦しい・・・

お、お話だけ・・でも、怒ってはいないみたいでよかった・・・

車は駅のある繁華街から離れて、住宅街の方に向かってる・・・

 

「イタル君」

「はいっ!」

「そんなに緊張しないで・・好きなタイプの女性は?」

 

眼鏡を直しながらミラーごしに僕の方へ微笑みかける流香さん。

 

「その・・・やさしい人が・・」

「子供らしい意見ね、私は、やさしい方じゃないと思うわよ?」

「で、でも、流香さんだって、やさしい・・」

「私だって我を忘れる事があるし、意地悪だってするわ、一緒に打ってた後、私、怒ってたでしょ?」

「で、でもぉ・・」

「・・・やさしい人が好き、って、恋人同士になれば誰でもやさしくなるわ、

 その後もやさしいかが大事だけど、私は自信ないわ」

「そうなんですか・・」

「あとは?どんな女の子が好きなの?」

「やっぱり、その、恥ずかしいけど、甘えさせてくれる人が・・」

「そりゃあ恋人には甘えさせるわよ、逆に君も甘えさせてあげないといけないのよ、憶えておきなさい」

「はい、憶えます」

「いい子ね、ほんっと、ませた子ね・・・」

 

流香さん、やっぱり大人なんだなあ・・・

そう思うと、もっともっと教えて欲しい・・・

は、裸とか見せてくれないかなあ?さらに、さわらせてくれたり、もっと・・・

 

「ふふっ、耳まで真っ赤にして可愛い・・お姉さんもどきどきしちゃうじゃない」

「え?あ・・お姉さん・・・」

「なあに?まだおばさんとか言うの?」

「いえ、ちがいます、流香おねえさん・・・」

「よろしい」

 

流香さん、きつい人だけど、でも、すごくかっこいいなあ・・・

胸も大きいし・・・そうだ、僕は何してもいいはずだから、さ、さわらせてもらう事だって・・・!!

 

「さ、ついたわ、ここよ」

 

キキキッ・・・プーップーップーッ・・・

大きなマンションだ、その駐車場に車を停める・・・

 

「さ、降りて」

「はいっ」

 

車から降りるとさっき車内でぶつけた頭がまだちょっと痛む・・・

 

「大丈夫?血とか出てない?」

「うん、多分・・・」

「さ、こっちよ、いらっしゃい」

 

大きなロビーを通ってエレベーターに乗り14階で降りる、

すごく広くて大きいマンション、プロの囲碁士って儲かるんだなあ・・・

 

「どうしたの?君もプロになって頑張ればこれぐらいの所にはすぐ住めるわよ」

「そうなんですか・・すごい・・・」

「さ、ここが私の家」

 

ガチャ

 

「いらっしゃい、適当に座って」

 

中は明るく落ち着いた感じ、

あ、確かあれはレコードっていうやつなんじゃ・・・

もちろん別にCDやMDも置いてある・・・僕は黒いソファーに座る、流香さんは上着を脱いで・・

 

「あ、ごめんね、ちょっと着替えるから待ってて」

 

奥の部屋に入っていった、ベッドがちらっと見えたから寝室だな・・

部屋の中は大人の女の人の匂いがする、香水とかかな・・お、落着かない・・・

碁盤と碁石がある、でもこれ、なんだか立派・・勝手に触ったら怒られるかな・・・

向うには透明なチェスの駒と盤が飾ってある、あれも高そう・・・そのさらに向こうにはパソコンがあって・・・

部屋の真中にある透明なテーブルの上にはワイングラスがある、底にピンクの液体が残ってる、お酒か・・・

こうして見てるとつくづく大人の女の人の部屋に来たんだなって思う、雑誌もあるけど外人のお姉さんが表紙の分厚い本・・・

漫画なんてどこにもなさそうだ・・テレビ、大きいなあ・・・あ、エアコンが動いてる、部屋に入ると勝手に付くのかな?

 

「おまたせ」

「流香さん・・」

 

白いワイシャツ姿の流香さん、上着を脱いだだけなんだろう、

下は・・長いスカートだけど履き替えてる、さっきの黒くて分厚い感じのよそ行きじゃなくて、

紺色で薄い生地の、家の中用っていう感じ。すごいな、僕のママなんて家ではジャージなのに。

 

「冷たいお茶でいい?」

「はい、なんでも・・」

 

台所の方で冷蔵庫を開けペットボトルのお茶を出しグラスに注ぐ、

あらためて見ても背が高い、眼鏡も様になってて、学校の美人な先生って感じがする・・・

 

「氷入れる?」

「あ・・どっちでも」

「じゃあ入れるね」

 

カランカラン・・・

両手に持ってこっちへ・・・

 

「どうぞ」

「いただきます・・」

 

ごくっ、ごくっ、ごくっ・・・ぷはぁ

 

「ごちそうさま・・」

「一気に飲んじゃったのね、もう一杯飲む?」

「ど、どっちでも・・」

「じゃあ持ってくるね」

 

自分のグラスを置くと再び台所へ行く流香さん・・・

僕、一気に飲み干しちゃった、そういえば車ですごく緊張したり恥ずかしくて熱くなってたから、

喉がカラカラだったんだな・・・流香さんが横に座って僕の目の前のグラスに再びペットボトルから

トクトクとお茶を注いでくれる、それを一気に飲み干す!また空になっちゃった・・

 

「あ、ありがとう、おいしいです」

「元気ね」

「その・・えっと」

 

お茶を飲む流香さん、置いたグラスに紅い口紅が付いている・・・

すごくどきっとする、胸の鼓動が早くなる・・・

 

「ふう、落ち着いたわ」

「はい、その、ごめんなさい、迷惑かけて・・」

「なにが?」

「えっと、囲碁クラブで、あんな騒ぎになっちゃって・・」

「あれは私が悪いの、それにまあ、あんまり気が乗らない仕事だったしね」

「そうなんですか?」

「どこへ行ってもおじいさんばっかりでしょ?しかもいやらしい人が多くて・・・

 丁度いい口実が出来てよかったわ、でも君の事は心配しないで、ちゃんとフォローしておくから」

「そう、ですか・・・」

 

いやらしい人が多い・・・

ぼ、僕も、いやらしい・・しまった・・あやまらないと・・・

 

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