せぇらぁルリー☆

 

「いもうと・・・さん?」

「う、うん、昨日アメリカから来たばっかりなんだ・・・」

「・・・猫ちゃんに妹がいたなんて、知らなかったわ」

「僕もつい最近知った」

「そうなの・・・」

 

真雪と僕の間に沈黙が流れる、いつものことだ。

 

「お兄ちゃん、行こ♪」

 

ルリーは僕の腕をに抱きつくと、そのまま強引に引っ張り、

僕を学校へと連れて行く。

 

「あ、ね・・こちゃ・・ん・・・・」

 

聞こえるか聞こえないかというくらい小さな声で僕を呼んだ真雪をおいて、

ルリーと家を離れた。

 

真雪はああやってたまに僕を待っている。

多分、一緒に学校へ行きたいのだろうが、

いつも今のように沈黙になってしまい、僕が先に行ってしまう。

もう、こんな事が5年も続いている。

 

真雪と僕は小さな頃からいつも2人一緒に遊んでいた。

ずっと仲が良く、僕は真雪にだけは笑顔をたやさなかった。

お互いの親公認の仲で、「おとなになったらけっこんしようね」という約束を、

しょっちゅうしていたものだった。

 

しかし中学に入り、同じクラスになった僕は、

周りの冷やかしが恐くなり、真雪に「学校では絶対に猫ちゃんと呼ばない」という約束をした。

しかし、その約束は2日ももたず、クラスのみんなの前で僕はそのあだ名を呼ばれた。

おかげで冷やかしの嵐、黒板にはお決まりの「猫ちゃん・真雪のあいあい傘」が書かれたり、

みんなこぞって僕を「猫ちゃ〜ん」と呼ぶようになったり、猫ちゃんグッズや春の猫ちゃん祭り、

猫ちゃん数え歌(唄・天童よしみ)まで作られてしまった。

 

僕はその日から真雪にまで無気力・無感動になり、 

真雪との仲はそれっきり、話すらほとんどしなくなった。

今日のようにたまに僕の家に来て学校へ一緒に行こうとしたり、

得意な食事を作ろうとしに来るのだが、いつもお互い会話が続かず、

すぐに沈黙の時間が流れてしまうのだ。

そんな関係が今日まででもう5年間続き、

そして今年は5年ぶりに真雪と同じクラスになった。

 

「お兄ちゃん、ルリーは絶対に外では言い間違えないからね♪」

 

全てを知っている、という意味なのか、

ルリーは僕にそう言いながら、僕の隣りを歩いている。

 

真雪・・・僕の初恋の幼なじみ・・・

でも、僕にはもう、隣りに可愛らしく愛しい魔法少女がいる。

そう、僕はもう、ルリーだけが好きなのだ。

 

 

 

3限目、体育の授業。

男子は野球だ、青空の下で白球を追いかける。

隣りのグラウンドでは、中学1年女子がソフトボールをやっている、

水色の髪の少女が一際輝いて目立つ。

 

「おい猫ちゃん、あの女の子、すっげーかわいいよな」 

 

打順を待っている間、隣のクラスメートが話し掛けてきた。

体操服のルリーはとてもかわいい、いや、

ルリーは何を着てもかわいいのだ。

ぼーっと見ていると、ルリーはピッチャーをやっていた。

ソフトボールなのに、下投げなのに、フォークボールがズバズバ決まる。

ナックルやカミソリシュート、そしてスプリットフィンガーファーストボールまで投げている。

あっという間にチェンジ、という時にクラスメートはまた話しかけてきた。

 

「あの子、名前なんていうんだろうなー」

「・・・名字は僕と同じだよ、あれ、僕の妹の瑠璃だから」

「へぇ、そうなんだ・・・え!?マ、マジかよー!」

 

その時、僕に打順が回ってきた。

本当に妹かとか紹介してくれとかうるさいクラスメートをしり目に、

僕はバッターボックスに入る。

ピッチャーは野球部に推薦されて入った将来のエース候補、

しかも父親はプロ野球で「炎のストッパー」と呼ばれたほどの名投手という金の卵だ、

どうせ打てやしないだろう。

 

第1球、やる気のない空振り。

第2球、ちょっとやる気を見せてるつもりの空振り。

第3球、打つ気もないので見逃したらボール。

第4球、

 

「お兄ちゃーん、頑張ってーー!」

 

かわいい声がグラウンドにこだました。  

ルリーがいつのまにか、僕の座っていたベンチにいる。 

となりのうるさかったクラスメートは幸せそうに、

一緒になって応援している。

 

「お兄ちゃーん!広角打法よー!!」

「猫ちゃん打てー!青い稲妻ー!!」

 

僕はルリーの声援でやる気を出そうと思ったが、

クラスメートの声援で、そのやる気は一気に萎えてしまった。

 

第4球、僕はバントをした。

 

「カッキーーーーーン!!!」

 

バットは明らかに意志を持ち、

バントの形のままボールを天高く弾き飛ばした。

僕の腕がぐいっと引っ張られたぐらいだ。

ボールは弧を描き、軽く第2グラウンドを越え、

民家が並ぶ外へ消えていった。

 

「すっげー!おい、150mどころか300mは飛んだぜ!」

「バントでホームランなんて、ファミコンの『燃えろ!プロ野球』でしか見たことないよ!!」

「お、おい!野球部の顧問の先生呼んでこい!」 

「どうしたの?何があったの?火事???」

 

騒ぐ観衆、うなだれるピッチャー、 

ゆっくりグラウンドを回る僕。

ルリーを見ると、かわいく手を振って軽くウインクした。 

もどる めくる