『金匱要略』という古典の中に、この章があります。
妊娠している人の事を書いていますが、不妊の方や月経不順の方にもピッタリの処方が並んでいます。
病気の脈ではないけれど、脈が少し弱い。
そして水気の物を欲しがるが食べられない。
寒熱などの症状もない。こういうのを妊娠という。
これは、桂枝湯の主治である。
ここでは、悪阻(つわり)の症状を述べています。
「法において60日」頃この症があるだろうというのは、「悪阻」は妊娠して2〜3ヶ月頃におこるという事でしょう。もし、医者が妊娠と言う事を知らずに、誤って吐かせたり下したりすると子供の生を絶ってしまうという事です。
頭が痛いとか風邪気味かなっていう症状が現れた時には、
変な薬を飲まずに、桂枝湯を煎じて体を温めましょう。
桂枝湯で陰陽を調和しなさいよって事が書かれています。
「ちょう病}というのは、子宮筋腫のような、前からある腹の中の塊の事をいいます。
生理が止まってから、まだ3ヶ月も経たないで、しかも、おりものが止まらない。そして、胎が動いてへその上にまであるのは、お腹の中のしこりが害をして、妊娠をジャマしているのです。
まあ、いろいろありますがここでは要するに
という事です。
桂枝茯苓丸は、子宮筋腫によく用いる処方です。
桂枝茯苓丸を丸薬あるいは粉薬、煎じ薬で用いると、
リンゴ大くらいまでは漢方で治ると云われています。
どんなにやってもだめな時もありますが。
それから服薬を中止してから後に良くなるという事もあります。
桂枝茯苓丸については、エキス剤はどうも効き目が良くない様に感じます。もし、何年も、エキス剤をお飲みになられてる方がいらっしゃれば、是非とも、煎じ薬に変更してみて下さい。今までは何だったんだろうと思いますよ。きっと。妊娠中の方は、丸薬の方が飲みやすいかもね。
妊娠して、脈が弦となってお腹が痛い。そして発熱し、いよいよお腹が張り、寒気がする。そして、子宮の締まりがなくなってくる頃には、附子湯で温めなさい。と書かれています。脈が弦というのは、寒を示しています。だから冷えて腹が痛むという事です。
だらだらと出血が止まらない人のための症です。
「半産」とは流産の事で、流産の後に、ずっと続いて出血が止まらない、それから、妊娠していて出血する者、これは流産のおそれがあるわけです。
「胞阻」というのは妊娠中に腹が痛むという事。
つまり、ここでは、漏下と流産と、妊娠していて出血する場合と、妊娠中に腹が痛む胎漏と、この四つには窮帰膠艾湯が良いという事をうたっています。
確かに出血にはよく効く処方です。
ただし、赤ら顔で、いわゆる充血症状のある方は、この処方を用いると逆にひどい出血を見る事があるので、要注意。どんな処方でも、漢方薬を分かっている人に処方をお願いするのが一番なのは当り前の事です。
「きゅう痛」とは急に痛むという事で、ひきつれるように、
あるいは、ひっぱられるように痛む。
妊娠中にお腹がひっぱられるように痛むときには当帰芍薬散をお飲みなさい。ということです。
本方は貧血気味や冷え性の人の月経不順、生理痛などに良く用いられます。
また、水太りで立ちくらみや動悸があり、小便は少ないような人。そして、水が多くなり血が少なくなるために月経量が少なくなります。
桂枝茯苓丸は血実性のオケツのための月経障害で、
当帰芍薬散は血虚性のオケツのための月経障害と
理解して下さい。
妊娠、嘔吐止まざる者は乾姜人参半夏丸これをつかさどる。
妊娠中の悪阻には、小半夏加茯苓湯がよく効きますが、これでもだめな時には乾姜人参半夏丸がよろしいです。
当帰、貝母、苦参、各4g
粉末とし、丸薬にして服用する
妊娠中で、だんだんおしっこが出難くなって、膀胱炎のような状態となり、、小便が一度に出なくチビチビと出るようになった時。しかも飲食の状態は普段と変わらないような時。そんな時には、当帰貝母苦参丸がよろしいようです。ムチャクチャ飲み難い薬なんでオススメはようしません。
妊娠、水気有り、身重く、小便利せず、悪寒し、起き上がればめまいがする。葵子茯苓散これをつかさどる。
妊娠中に浮腫が現われ、身体が重くて、小便の量が減り、ゾクゾクと寒気がするような時には葵子茯苓散の主治であるという事です。
たいがいは、当帰芍薬散でおさまります。それでもだめな時には、葵子茯苓散がよいのかも。
当帰、黄A、芍薬、白朮
粉末として1日2回服用
婦人妊娠、常に服するによし。当帰散これをつかさどる。
妊娠したらすぐにこれをお飲み下さい。
産は易し、子供の病気はなく、産後の百病にも効くといわれている薬です。
「小さく生んで、大きく育てる」妊娠中は是非お飲み下さい。
白朮、川窮、山椒、牡蛎
以上を粉末として1日4回服用
妊娠中にお腹の赤ちゃんを養うのには、白朮散がよろしいですよということです。
もし、お腹が痛めば、芍薬を加えなさい。いやな痛みが有る時には川窮を加えなさい。と云われています。
婦人、胎を傷り、懐身、腹満して、小便する事を得ず、腰以下重くして水気ある状の如し。懐身七月は太陰当に養うべし。養わざれば、これ、心気実す。当に労宮および関元を刺し、瀉すべし。小便微利すればすなわち愈ゆ。
これで、妊娠編の終了です。
次回は産後病脈症をお送りする予定です。
乞うご期待