初鰹で思い出すのはお袋の漬丼です。季節としては5月頃 近所の魚屋で鰹が入ると
時折買ってきて漬丼を作ってくれました。
結構物資が豊かになってきている時期なので昭和の30年代後半以降と思います。
たれもどんな具合か判らないが旨かった覚えが残っています。
今では寧ろ秋口から始まる戻り鰹の方が脂がのって旨いと思います。
ただ初鰹が出てくると季節が春から初夏と思いますが今はもっと早く
4月の声を聞くと現れます。実際に調べて見ると鰹の旬は初鰹が4-5月
戻り鰹が9月となっています。
ただ初鰹の思い出は世の中豊かになり始め戦後の混乱を抜けた思いが
母には強かったのかもしれません。
戦後物心ついて小さい頃の魚は近所に川や池で釣った鮒や
小さな川をせき止めてバケツで掬った泥鰌で、
たまに鯵が煮つけで出てきて、残った骨にもお湯を掛けて呑んだもので
刺身なんか考えられませんでした。
生粋の江戸っ子で小さい頃そこそこ裕福だった母は魚は鮪の刺身であり、
5月の若葉の季節は初鰹と決めていたようで戦後の影が残る小学校時代は
目刺や鰯の丸干しで小学校3-4年の頃肺結核になったときは良く鰯の丸干しを
食べさせられ、めざしに比べれば非常に美味しかった記憶があります。
中学入って昭和30年代半ばに向かうと私もか細いものの病弱からは脱皮して
生活に落ち着きが出てきた気がします。
それで初鰹を見るとうきうきした気持ちになり買ってくれたのかも知れません。
やたらに美味しいを強要されて、笑っている母の顔が何時も鰹を見ると
思い出します。
今の初鰹は刺身で酢醤油 生姜少し冷えた日本酒をグビリと一杯が一番です。
なお漬を色々たれを試して見るけれど何故か母の味と違うようです。