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ぼうふら

昔小さい頃は下水が整備されてなく、溝(どぶ)のあるところ何処でも

ぼうふらが湧いてました。

東京オリンピックと大阪の万博あたりですっかり東京や大阪の近郊は

整備され下水道も整いました。其れと同時にぼうふらも消えたようです。

また昔はあちこちに防火用水と称して、小さな池だったり、

足の着いた水がめというのでしょうか、戦争中爆弾が落とされたとき

の消火用の水ためです。これも水の流れが無くぼうふらの発生場所になります。

そして梅雨の終わりごろから日暮れ時ぼうふらが一斉に孵化して

蚊柱が防火用水の上に立ちます。もう直ぐ夏 蚊の季節が始まります。

昔はいたるところに蚊が居て良く刺されました。

刺されることに慣れっこになっていました。

防火用水を覗き込みぼうふらがうようよ上下に浮き沈みしているのを

ぼんやり眺めていた記憶があります。

少し大きめの防火用水は模型の船を浮かべて遊ぶのに絶好の場所で

特に細い木の船体に底に鉛の錘をつけて、船体の両側 前後にガイドをつけて、

ゴム動力で進行中沈んで走行する潜水艦を良く作って遊んでました。

正に作っては壊し作っては壊しと梅雨頃から夏の終わりまで

これで遊んでいましたが、その友達がぼうふらです。

船が通りぼうふらが逃げ惑います。ぼうふらの集団を突っ切るように船を走らせます。

たわいない遊びですが、どのくらいもぐってどこまで行くかを友人と競うわけです。

ぼうふらを蹴散らしてもぐって走行する船を見るのは、

さも敵に勝ったような気がします。その防火用水も昭和
30年代半ばから消え始め、

下水が整うに従いぼうふらも居なくなりました。

どぶも下水配管で地中に埋まり 小さな川も暗渠となって消えました。

蚊が居なくなったのは好いのですが、寂しくもあります。

水の流れている川は堤防が出来て、中小河川は河底が水位制御しやすくするため

コンクリートで固められ、呼吸が出来なくなっています。

ぼうふらが湧きたくても出来ません。

夏の夕暮れ 蜻蛉のように川面に棒状で現れるぼうふらの発生は見えなく

風物詩が消えていくのです。

しかし雑草の茂った我が家の狭い庭に夕方少し立ったら蚊にあちこち刺されたので、

コンクリートを離れれば居るようです。