さまよいの記 2000.6
2000.6.1
仕事がはかどらず、イライラが募るばかり。全くもってフットワークの軽い人と一緒に仕事がしたい。新入社員が入ってきて、前日まで楽しみにしていたくせに、今日は今日で仕事に神経が行ってしまっているので、全然名前も、顔も覚えられなかった。みな同じに見える。
2000.6.2
イライラのせいで、ひどく疲れが出ている。なんだか刺々しているせいか、周囲の言葉にも不快感がある。一人でやったほうが、確実に、そして効率よく進められるのに、そうもいかない。でもなあ、入社一年目の新人じゃねえんだから、もっとプロフェッショナルな仕事をみせてくれよ。俺よりも長い経験があるのになあ。そんないらんことで神経をつかう自分も神経質すぎるか。反省。
自分の配分は終了してしまったが、完全に終わって打ち合わせに行く目処も立てられず、仕方なく休日出勤することにした。
ぐったりと帰宅し、今日はもうのんびり過ごそうと決めた矢先に、Yさんより電話。所用があってYさんと会う。戻ると今度はKさんより電話で、手伝いの要請。また出掛ける。苦にはならないことだから、かまわないし、気分転換も出来、パソコンに向かう。
村上政彦著『ナイスボール』を読む。
執筆枚数7枚。
2000.6.3
今日は朝から所用があって母と二人で東京大田区に行く。先方に会う約束をしていたが、急遽用事が出来てしまったそうで、会えなかった。二人で仕方なしに喫茶店で昼食を食べていると、母が知り合いが池上にいるが、行けないかとのたまう。十年ぶりに会いに行きたいというので、地図で道を調べ、池上へ向かう。しかし一方通行の多い大田区。何度も道を間違え、挙句母も方向を見失い、困り果てる。ようやく車を止め、近所を歩いて知り合い宅へ。母も相手も非常に嬉しそうであった。時間があまり取れず、立ち話だけであったが、母も知人も満足して再会を約束した。
帰り道その知人のここまでの人生の来し方を聞き、深く感動する。人生とはまことに不思議。そして人生のなんと複雑で深いものか。ただただ尊敬するばかり。
帰宅後非常に疲れ、夕飯まで眠ってしまう。
執筆枚数六枚。
2000.6.4
今日は休日出勤。朝早く用事があったので頑張って起き、そのあと会社へ。眠くて眠くて、午前中やる気なし。後輩も出勤してきたので、後輩を相手に雑談して昼間で過ごす。その後仕事を始め、夕刻終了。帰宅後野球を見ようとしたら、Kさんが来宅。そのまま出掛ける。戻ってきて、野球を見るといつのまにか負けている。がっかり。
F1とサッカーがあったのだが、あえなく挫折。明日は再度の打ち合わせ。溜息ばかり。
2000.6.5
担当者と二度目の打ち合わせ。どうも日程と仕事内容に無理があり、その確認および現状報告。ある程度は妥協していただいたが、まだまだ不安は残る。しかし相手も譲らない。仕方なしに相手の条件をトライすることで合意。非常に疲れた。
会社に戻ると新入社員の子に「おかえりなさい」と大声でいわれて戸惑う。普段こんなこと言われないから(もしくは小さい声で言われるから)正直照れ臭い。
戻ってきてからの残業というものほど、面倒くさいものはない。気合いを入れてやっけることにする。
それにしても毎日疲れる。いらぬ神経を使ってるのもわかってる。仕事に集中したいし、邪魔されたくない。けれどそうもいかない、というのはイノシシ年の僕には辛いなあ。
執筆枚数5枚
2000.6.6
朝から担当者と連絡を取り合う。そのため思うように捗らない。仕事に集中しはじめたのは夕方からで、波に乗りそうになった矢先に、また担当者から連絡。結局一日を費やしてしまう。イライラしてしまい、残業中のT女史に八つ当たり。反省。
しかし、女とは一体どんな生き物か。29年生きてきて、これほどわからないものもない。
夜十一時半過ぎ帰宅。Kさんと逢う約束をしていたので、急いで風呂に入る。夕食はパス。Kさんと一時間ほど雑談。ひどく疲れる。帰宅後小説を書くもまるで乗り気がしない。
2000.6.7
今日も仕事が午前中動かず。ピリピリしているせいか、誰も近づいてこない。今日もまた残業しなくては行けない。土日も出勤が確実。今がフンバリどころ。ただじっと耐えるのみ。
昨日と同じような時間に帰宅。夕食を軽く食べ、母と少し話をする。
そのあと思うところあって新聞を切り抜きする。
僕はけして負けてはいけない。けして立ち止まってはいけない。けして人と比較してはいけない。それを破ったとき、今までは無意味と化し、これからもなくなってしまうのだ。
2000.6.8
非常に苦しい。こんなに出来上がりをイメージできない仕事も初めて。焦らず、じっくりとかまえてやらないと、頭がパンクしそう。精神的に疲れてしまう。どうも今日は集中力にかけ、仕事に身が入らない。理由は、まあ、一つどうも気になることがあって。仕事のことじゃないから、余計いらつく。人にはそれぞれ事情があるんだから、しようのないことか。
どうにも埒があかないので、少しだけ早く帰宅。
夕飯は兄の手料理。これが非常にうまかった。
今まで経験してきたことで、全てに共通するのは余計なものをつけない、ということだ。かじりはじめは大体において余計な飾りをつけたがる。しかしそれを過ぎると、その飾りが厭味になってくる。たとえば10のことを1で出来るのであればそれに置き換えていく。ただし、10がわかるようにしなくてはいけない。少しづつ、シンプルに。削ぎ落として行くこと。シンプルにするということは、一見単純に見えてしまいがちだが、100を知らなければ、10を1にすることが出来ないのだ。これはどんな仕事でも感じてきた。今の仕事もそうだ。僕の仕事はどんどんシンプルになっていく。そうすることで、より強靭で、無駄のないものになる。
小説でも同じことがいえる。とかく最近ネットで小説を書く人や、一般的な読書家と呼ばれる人たちは10を知るために100を欲しがったり、喜んだりする。飾りたてる事にキュウキュウとし、その本質において無知である。余計な装飾を凝らした文学ほど、中身の伴わないものである。またシンプルを履き違えている。1を1のままに表現することはシンプルではない。それは無知を意味するのだ。
2000.6.10
朝から仕事。休日なので会社は静か。おかげで仕事は地味ながら進む。昼はOさんと二人で中華料理。量が多すぎで、夕飯はいらないかもしれない。
夜九時半まで仕事をこなし、外に出ると雨。合羽をきて帰る。帰宅後そこそこ腹も空いたので軽く夕飯。その後Kさん、Sさん、M君と落ち合い、少々雑談をする。
とにかく疲れる。明日も朝から仕事に行かなくてはいけない。ゆっくりと寝て、のんびりと過ごしてみたい。それが出来れば苦労しないんだけど。
執筆は少しだけお休み。とにかく仕事に集中しないといけない。頭がもうパンク寸前だ。
2000.6.12
毎日同じ画面を見ていて、いい加減飽きてきた。周りの話し声にも過敏に反応し、ピリピリしてしまう。どうにも神経を逆なでする事が多すぎて、参ってしまう。夕方、なぜか無性に腹が立ち始め、煙草ばかり吸っていた。
夜十一時すぎに帰宅。疲れて夕飯も食べる気にならない。申し訳ないと思いつつも、夕飯を冷蔵庫にしまう。そのあと雑誌を読んでいると、徳島県にある大塚美術館なるものが載っていた。世界の名画のレプリカが多数ある場所で、ミケランジェロの『最後の審判』があった。この『最後の審判』は数年前、ミケランジェロ展を見に行った際、その習作と写真があり、非常に感激した思い出がある。それがこの美術館で複写とはいえ観れる。うーんと唸って、行きたいと考える。他にも見たい絵画があるので、一度足を運ぼう。しかし入場料三千円は高いか、安いか。
今日一日メールを待っていたが、返事ナシ。一言でもいいから返事をしてほしいよなあ。大体返事すると言っておいて、待てど暮らせど返事をよこさない。住所不定で行方不明の人に出したのなら、仕方ないか、と思える。けれど本人はいたって元気で、住所もわかっているのである。これはいかがなものか。たった一言でいいではないか。いらぬ心配をしてしまう。
2000.6.15
前日より夜勤をしていて、体がぐったりしていて、食欲もなし。朝九時半に会社を出て、とりあえずビッ○カメラに用事があったので、寄り道。でも良く考えたら十時開店だから、時間が余る。仕方ないのでファーストフードでお茶を飲む。そのあと○ッグカメラに行く。用事をすませ(ただ単に注文した品物を取りにいっただけ)、帰宅。
夜中に一人で仕事をしていると、時間はあっという間に過ぎる。仕事は進んでいるけどカメの歩み。いつ終わるかわからない仕事。夜明けに絶望感にひたる。しかし、しばらくぶりの緊張感のある仕事だからか、腕が落ちてるよなあ。間があくとすぐになまってしまう。
2000.6.16
前日の夜七時に起き、夕食を食べながら巨人戦を見る。しかし江藤は良くHRを打つ。桑田もようやく調子が出てきたみたいで、気分が良い。
会社に九時に着くと、仕事は少し進展していた。ありがたい。打ち合わせをしたあと、画面に向かうも気力ナシ。
CDを聞きながら仕事をしていると、夜中の一時半に突然メールが来てビビる。まさか担当者ではないだろうとビクビクしながら見ると、T女史から呑気な励ましメールをいただく。夜中に苦笑い。
仕事、いまだカメの歩み。
2000.6.18
前日は日記も書く気力すらなし。ようやく一山超えた。女子社員の愚痴を一杯聞かされ、挙句昼飯まで奢って、おらあ一体何をしてるんだか。愚痴をいいてえのはこっちだぞーと心の中でわめいておく。
しかしまあ、女性と仕事をすることのしんどさったらない。男に教えるよりも何倍も神経をつかう。おかげでヘトヘト。
2000.6.24
昼過ぎ起床。腰が痛いと思いつつ、煙草を吸いながら目を覚ます。
昼食は食べる気になれず、抜き。そのまま出掛けて、知人に会いに行く。夕刻にKさんと落ち合い、近所を散歩。そのあとYさんより電話。雑談。
明日は衆議院選挙。雨との予報に、面倒くさいなあと思う。とは言っても先週不在者投票を済ませた僕には関係ないんだけど。
夜掲載した連載小説を読み返し、やっぱり自分は小説がヘタなんだなあと痛感。ぐうの音も出ない。
2000.6.25
朝九時半に起床。十時より出掛ける。YさんとKさんに逢う。Kさんと話していたら、夜Kさん宅で仲間数人と飲むというのでお呼ばれされることにする。夕刻より近所を散歩。選挙の日だからかわからないけど、いつもより静か。ブラブラと歩き続ける。
夜九時すぎにKさん宅へ訪問。数人の知人とどんちゃん騒ぎ。実に楽しかった。けれどKさんの奥さん、大変だったろうなあ。申し訳なし。
深夜帰宅後、選挙速報を見る。結局どこも勝たなかった不思議な選挙であった。
2000.6.26
今日より三日間、有給休暇。どこか旅行にと思ったが、財布の中身と相談して断念。
昼過ぎにメールをチェックしたら、非常に不愉快なメールが来ていて、ブチッとこめかみから音がする。ひどく腹が立ち、そのままドライブに行く。ガソリンを入れ、どこに行こうかと思いつつ、東名高速に乗り、大井松田まで。途中の中井PAで煙草を吸いながら霧にむせぶ山並みを見ていたら、急に腹を立てている自分が馬鹿らしく思え、そのまま高速を降りて、下道で新横浜まで戻り、きつい仕事のご褒美に、腕時計を購入。
しかし、どうやったらあんな恥ずかしい文面を書き、送ってこれるのか。小学生じゃあるまいし、20を越えた、立派な大人が書くにはあまりにお粗末な文面。よっぽど怒りをぶつけてやろうかと考えたが、どうせこのような文面を書いてくるやつにはわかるまいと、出さないでおく。
人の恩を仇で返されたような気分で、どうにも腹の虫が収まらず、小説を書こうと思ってもむかむかとして一向に進まない。それじゃあと布団に入っても寝つけない。しかたなしに友人に深夜の電話をして八つ当たり。本当に申し訳ないよなあ。ガキなのは僕のほうかもしれない。
2000.6.27
今日は母を連れて、オヤジの墓参りに行く。二時近くに家を出て、車中ひたすら母の話を聞く。
人は話し相手がいないと生きて行くのは非常に困難だ。一人でいることは、恐怖に近いものが体中を駆け巡り、落ち着かなくなる。そして生命力は衰えていってしまう。ここ一ヶ月、母の話し相手もキチンと出来なかったから、今日は良い機会。
汚れていたオヤジの墓を洗い、ボウズに隠れて煙草に火をつけ、線香代わりに添える。色々報告。
帰りに母がオヤジはハイライトを吸っていたと教えてくれる。今僕もハイライト。そして母はあろうことかオヤジの亡くなった年を間違って僕に言っていたことが判明。38に亡くなったのではなく、29、数えで30の時であった。今まさに僕の年齢。深く考え込む。あと少しでオヤジの年齢を越える。その時僕はオヤジを越した人物足りえるか。否、そうではないだろうな。僕は未だに子供のように怒り、喚いている。
夜おいきむちくんより電話。少し雑談をする。
巨人は久しぶりに勝つ。気分も良い。
執筆枚数二枚。
2000.6.28
有給休暇の最終日。これまた昼過ぎに起きて、寝ボケたまま髪の毛を切りに行く。椅子に座ってそうそう、「後ろの毛、自分で切りました?」と聞かれる。素直に頷く。
「ちょっと外を歩くには恥ずかしい切り方」と言われる。うっせえうっせえ。好きで切ったわけじゃねえぞ。髪切りにくる時間がなくて、うざったいから切ったんだ。
挙句、マッサージの時に「うわっガチガチ」と言われ、オトコの人に肩をぎゅうぎゅうと押され、十分近くもマッサージ。柔らかくはなったけど、押されすぎてイタイ。
帰りに服を買いに行き、Tシャツ一枚、Yシャツ一枚を購入。そのあと本屋で本を二冊購入。
夜、寝ようとしたらMクンより電話。話を聞いてほしいと。Mクンと合流後、ドライブをしながら話を聞く。ああ、僕はこの前向きで、ひたむき。そして優しいMクンが好きだ(別にアブナイ意味じゃない)。こういう気概のコに触れると、自分も勇気が湧いてくる。
帰宅後なんだか妙に興奮(しつこいけどアブナイ意味じゃない)して寝つけず。朝四時就寝。
つづく
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